第131話 トップ
「私達にだって非はある!」
エルが叫ぶ。
「裏切り者は黙っていろ!」
だがエルが言葉を発した瞬間、異世界人の中で大きく敵意を膨れ上がるのを康生を肌で感じた。
それほどまでにエルが異世界人から敵対されていることを再度感じ、今すぐエルのそばに駆け寄ってあげたいと康生は思う。
しかしここで異世界人達への警戒を解いてしまえば、エルや時雨さんを守ることが出来ないので、康生の心の中で心配することしか出来なかった。
しかし異世界人達の罵声が止むことはない。
いくらエルが叫ぼうとしようが、すぐにかき消されてしまうだろう。
エルもこの状況をどうしようか迷っているようだった。
「話を聞いてくれっ!」
この状況にいらつきを覚えた康生は、足を踏みあげて近くにあった岩を砕く。
「…………」
すると異世界人達は急に大人しくなる。
エルはその隙にすぐに声を張り上げる。
「私達だって人間達の土地を手に入れようとした!自然を私達のものにしようとした!でもその結果がこれでしょ!?自然なんてどこにもない!結局私たちがした事は無駄に人を殺しただけなのよ!」
言葉の通り、異世界人達は確かに初めは人間達に攻撃をされた。
しかしそれから先は異世界人達は積極的に人間に危害を加えようとし、さらには人間達の土地を奪おうとさえ考え始めたのだ。
その結果が今の地上である。
研究では、異世界人達が使う魔法は、自然の力を変換し行うことが分かっている。
現在の地上を見て分かるように、もう地上には草木の一本も生えてない。
それだけ異世界人達がこの地上で魔法を使い、人間達と戦ったということだ。
人間と異世界人との戦いは全て、人間達がいる土地で起きたことなのだ。
「裏切り者が何を言うかっ!!」
だが、その事実を異世界人達は決して認めようとはしない。
むしろ、エルの発言に怒りを覚え、今にも異世界人達が攻撃を仕掛けてきそうな、そんな雰囲気さえあった。
(……ここまでか)
これ以上話し合うことに限界を覚えた康生は時雨さんに目配せする。
コクリ。
康生と目があった時雨さんはコクリと頷く。
それが合図のように康生はまっすぐクレーター
の中へと足を踏み入れる。
「な、なんだっ!」
異世界人達は一斉に動揺を起こし、すぐに武器を構える。
康生はそんな異世界人達を前にクレーターの前まで歩く。
中央まで来た所で康生は叫ぶ。
「お前たちのリーダーを呼んで欲しい!」
いくら話し合いをしても無駄と判断し、異世界人のトップと合理的な話し合いをしようと思った。
しかし次の瞬間に現れた異世界人のトップに、康生はおろか、エルまでも驚愕の表情を浮かべる。
「私がこの部隊の指揮官ですが?」
そう言って上空から降りてきたのは、あの時、エルを殺そうとしていた翼の女だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます