第121話 つけられた

「どうした?」

 慌てて隊長が入ってきたので、時雨さんはただならぬ気配を感じすぐさま立ち上がる。

「そ、それが、我々がここに来るまでの間につけられていたみたいで……。現在こちらに向かって異世界人の大群が率いてます!」

「な、なんだと!?」

 つけられていた。その言葉を聞いた瞬間、康生は最悪の可能性を考えた。

 どうやら時雨さんも同じようなことを考えたらしく、顔色を悪くしていた。

「くそっ。こうなってしまった以上我々を信用してもらえるかは分からないか……。それで都長はなんと言っている?」

「都長は現在ただちに兵をまとめているので、詳しい話しは何も。ただすぐに時雨さん達を都長の元へと連れて行くよう言われた次第で……」

「そうか……」

 時雨さんは色々な可能性を考えながら表情を歪める。

「早く行こ時雨」

 そんな中、エルは時雨さんの袖をそっと引っ張る。

「そうだな。大群が押し寄せているんだ。考えている時間はない」

「そうですね」

 そうして時雨さん達は隊長達他、見張りの兵士達とともに都長の部屋へと再び訪れることになった。




「失礼します」

 時雨さんを先頭にして扉を開ける。

 部屋の中は先ほどのように都長一人だけではなく、何人かの兵士――恐らく隊長クラスの兵士――が長机の前に座りなにやら会議のように話し合いをしていた。

 話し合いしている中に入ってきてしまったが、都長はすぐに目の前の椅子に座るように言っていた。

「――さて、事情はもうすでに聞いているな?」

「はい。異世界人の大群が迫ってきている、と」

「なら話しが早い。ならばお前達には……」

 コグリと康生は唾を飲み込む。

 今からどんな事を都長に言われるのかを想像したのだろう。

 恐らく都長も、この町の人々も康生達のせいでここで狙われていると思っている。実際にそうなのだから何も言い返すことはできない。

 そんな中で周りの兵士達の視線にさらされながら康生達はじっと都長の言葉を待った。

「――我々と共に異世界人を迎え撃ってほしい」

「え?」

 都長の口から出てきた言葉に時雨さんは驚きの表情を浮かべる。康生もエルも覚悟していた言葉とは違う言葉を投げかけられ呆けていた。

「なんだ?もしかしてお前たちのせいだと罵られるのかと思ったのか?」

 そんな康生達を見て都長は少し表情を和らげた。

「は、はい。なにより今回の件は私達が原因なので……」

 康生自身もそう思っていた。

 しかし都長の反応は思っていたものと違った。

「そんな事言っても君らは故意にやったわけじゃないだろ?それに隊長から話しは聞いている。ここにくる間に異世界人と交戦したそうじゃないか。だから君たちが異世界人から敵としてみられていることは十分に分かる」

 優しく投げかけるように都長は話す。

 だが、次の言葉を話そうとする時に表情を切り替える。

「だから助けてほしいと、一緒に戦ってほしいとお願いしている。ただ、どうやら君たちは異世界人と戦うことをあまり良しとしていないと聞いてな」

 都長は目を細めてエルを視界にとらえた。

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