第120話 訂正

「あぁ、一つ訂正し忘れていた」

 部屋を出る直前に都長は康生達を呼び止める。

「先ほど、あたかも君の両親が異世界人に殺されたかのように話したが、あれはあくまでも噂だ。本当かもしれないし、嘘かもしれない。その事だけは頭に入れておいてくれ」

「……分かりました」

 そういえば、都長が初めに異世界人に殺されたと言われているとしか言っていなかった事を思い出す。

 康生の心の声を聞くべく、あたかも殺されたかのように言ったのだろう。

 だが可能性としては十分にある、と都長に言われたように康生を感じた。

 そうして康生達は都長の部屋を後にした。

「――大丈夫康生?」

 部屋を出るとエルが心配するように近寄ってきた。

「心配かけてごめん。もう大丈夫だよ」

 そんなエルに笑顔を向ける。

 正直康生はまだショックから立ち直れずにいた。それでもエルの前では元気に振る舞おうと康生は思った。

「――では部屋で案内します」

 と最初に案内してきた兵士に部屋へと案内されることになった。




「しばらくの間お休み下さい。もし何か用件がありましたら呼んだらすぐ来ますのでいくらでも言って下さい」

 兵士は最後にそれだけ言って部屋から出ていってしまう。

 しかし足音が聞こえないことから、兵士は扉の前で待機でもしているのだろう。

「ふぅ……」

 時雨さんが早速ソファに腰掛けてため息をこぼす。

 都長相手に話しをしてきたせいか、時雨さんは大分疲れた様子だった。

「お疲れ様時雨」

 そんな時雨さんの隣にそっとエルが座る。

「あぁ、エルもな。それに康生も」

 エル、時雨に交互に視線を向ける。

「いえ、俺は全然」

 そういいながら康生は時雨さん達の向かいのソファに腰掛ける。

 机には水が用意されていたので康生は早速口をつけた。

「――確か水って貴重じゃなかったんでしたっけ?」

 水を飲んでから康生は気づいた。

「普通はそうだ。まぁ、それだけ私達は信用されたという事かもしれないが」

 そういいながら時雨さんも水に口をつける。

「…………」

 エルも無言で水を飲む。

「それで、これからどうするんですか?」

 コップを机に置いたタイミングで康生は訪ねる。

「まぁ、とりあえずは都長の返事を待つしかないな」

「まぁそうですね」

 どのみち自由に動き回れるわけでもないから待つことしか出来ないのだろう。

 その間にもっと時雨さんから武器の使い方でも習おうかと康生が考えているとエルがなにやら神妙な表情を浮かべていた。

「あ、あの康生……」

 ゆっくりと口を開いたエルだったが、突然扉が開かれ中断してしまう。

「た、大変ですっ!!」

 そう言って入ってきたのは康生達と一緒に来た隊長達であった。

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