第114話 部屋
「しばらくここで待っていろ」
そう言われて隊長達を除いた康生達が連れてこられたのは地下都市の入り口の前に設けられた部屋だった。
ここに案内させられたということはやはりまだ完全には康生達を信用してはいないようだ。
でも康生はこの待遇でいいと感じる。
何故ならはここで何も話してないのに待遇されたとすればそれは確実に裏に何かがあるという事だ。
だから疑ってかかる彼らの対応は康生にとってはある意味信用できるという事だ。
「大丈夫かな……」
部屋に入るとエルが不安そうに呟く。
「大丈夫だよ。隊長達には私から全て説明してある。それを伝えてくれるだけで私の目的はとりあえず達成される」
そう。隊長達は今地下都市の中へと入っていった。
何故ならは時雨さんの話す協定の内容を隊長達から聞くためだ。
流石に時雨さんは人類を裏切ったと言われている地下都市出身なので、入れてもらえることはなかった。
だが時雨さんは事前に隊長達としっかり話し合っていたおかげか、隊長達が代わりに話しをすると聞き少しだけ肩の荷をおろしている。
「――それでこれからの事を話したい」
それでも時雨さんはキリッと表情を返る。
「これからって?」
とすぐに康生が言葉を返す。
「これから先……また異世界人達と会った場合の対処方法だ」
「また会ったら……」
時雨さんの言葉を聞きエルは顔を曇らせる。
確かに結局、異世界人に対する対応について結果が出ないままだった。
「これでもしこの地下都市と協定を結んだとしても、向こう――異世界人が友好的にならなければ私達は戦わざるをえない」
時雨さんの言うことはよく分かる。
しかしそれでもエルは異世界人と戦うことをよしとはしない。
何故ならば、
「もし、異世界人とここで戦ってしまったら、永遠とそれが続くだけだよ。だからもう戦うことはしちゃいけない……。それは絶対だよ…………」
エルも薄々はそんな簡単なことではダメだと気づいている。
でも対策することが出来ずに苦痛に表情を染めている。
一体どうすれば。ひたすらその言葉が頭を駆けめぐる。
「――やっぱり異世界人達の世界に行くべきだと思う」
そんな中、康生が提案する。
「異世界人にも分かってもらうには異世界人達と話す必要がある。でもこっちに来る異世界人は皆人間と戦うことを覚悟してやってきている。でも向こうの世界にいけばきっと分かってくれる人もいるはず。少なくとも俺はそう思う」
きっと時雨さんやエルと仲良くしてくれている地下都市の皆、それに隊長さん達のような異世界人が絶対にいるはずだ。
康生は少なくともそう思っていた。
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