第103話 地上

「じゃあ行こうか!」

 時雨さんを先頭にし、それぞれ康生とエル、さらにその後ろには隊長達三人が並ぶ。

 宴会から目覚めた後、康生達は時雨さんと共に隊長達それぞれの地下都市へと向かうことになった。

 元々兵士達は隊長達と時雨さんが話し合いをしている時点で既に帰らせていた。

 それで今回、隊長達がそれぞれの地下都市に帰ろうとしているが流石に三人で帰らせるのは危険だと考え、護衛として康生達がついて行くことになった。

「いや、ほんとに護衛についてもらってすまない」

「いえ、いいんですよ。どちらにせよ、それぞれの都長とは話しをしなければならないと思ってたんですから」

 確かに時雨さんと隊長達で話し合って、協定を結ぶことにしたが、隊長の権限ではそれを決定するのは難しい。

 だからこそ、現在都長の代理として働いている時雨さんがこうしてそれぞれの地下都市に出向くことになったのだ。

「私たちの地下都市も食料不足に苦しんでいます。それが解決されるのであれば、おそらく協定は飲んでくれると思います。それとエルさんと合えば恐らく異世界人に対する考えも少しは変わるでしょう」

 と一人の隊長が語る。

 確かに食料不足が解決するならどこの地下都市もすぐに協定を結ぶことを許可するだろう。と康生もすぐに思った。

 しかしそれでも後者の、異世界人との関係の改善についてはそんなに簡単にいくものではないなと感じる。

「うん。私も頑張るね」

 しかし、エルはやる気に満ちていた。

 自身の夢を叶える為に必死なのだろう。

 そんなエルが康生にとって輝いているようにみえた。

 それこそエルこそが本当に皆から必要とされる価値のある存在なのだと。

「それにしても康生さんの装備はとても独特ですね」

 そんな中、一人の隊長が康生の格好を見て呟く。

「あぁ、それは私も思っていた。私たちの鎧を改造したらしいが、一体そのコンパクトな装備からどうやってあんな力がでてるのか不思議でならない」

 と時雨さんも康生の格好を改めて見つめて呟く。

 確かに康生が着ている装備はひどく簡素なもので、全身の鎧ではなく、それぞれの間接だけにパーツがついているだけで、後は体に薄い鎧を着ているだけだった。

 これは時雨さんから預かった、兵士達が使っている鎧から研究し作った康生のオリジナル装備だ。

「ま、まぁ重いのは嫌だったんで最低限の装備にしたかっただけですよ」

 とそれから康生は鎧に関して質問攻めを受けた。

 そんな感じに康生達の短い旅が始まったのだった。

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