第33話 引きニート
「……やったのか?」
ドラゴンの背後で白い鎧の女は小さく呟く。
それに対し康生はゆっくりと頷く。
「多分これで大丈夫と思う。いくらドラゴンでも麻痺と睡眠薬には勝てないと思うし……」
そう言いながらも康生は今だ不安の表情を浮かべている。
だからこそじっくりとドラゴンの様子を観察した。
「………………よし。大丈夫みたいだ」
しばらくじっとドラゴンを観察し、最終的にはドラゴンの体をつついたりしたが、ドラゴンは全く反応を示すことはなかった。
それを見て康生、そして白い鎧の女はぐったりとその場に倒れ込んだ。
「ふぅ〜……よかった……」
体をぐったりと倒しながら呟く康生に対して白い鎧の女はまるで魂が抜けたかのようにドサリと倒れた。
「だ、大丈夫ですかっ!?」
近くにいたエルが真っ先に白い鎧の女の元へと走り出した。
しかし白い鎧の女は腕だけあげて大丈夫である事を伝える。
「いや、何。こうしてドラゴン相手に生き残れたことに少し驚いてしまって……」
地面に倒れ込んだまま白い鎧の女は口にする。
その言葉からは元々勝てる気などさらさら無かったように感じられる。そしてそれなのに一人でドラゴンの相手を引き受けた勇気に康生は素直に感服した。
「――それで君は一体何者なんだ?」
ゆっくりと体を起こした白い鎧の女はじっと康生を見据える。
その視線からは敵意とまでは言えないが、それぐらいの強い力が込められていた。
「いや、えっと……」
だから康生もなんと説明したらよいか考えた。
『ご主人様はただの引きこもりですよ』
しかしそんな康生の代わりにAIが応答を返したのだった。
「……引きこもり?」
そんなAIの言葉を聞き、白い鎧の女は眉を潜める。
「ち、違いますよ!」
だから康生は咄嗟に否定する。
『一体何が違うというんですかご主人様?』
だがすぐにAIに言葉に遮られる。
「そ、それは……」
康生は必死に言い返そうとするが、AIの言う言葉は確かにどこも間違っていないわけで、何も言い返すことが出来なかった。
『ほら私の言うことは間違っていないじゃないですか』
「いや、だからって言い方っていうものがあるだろうが!」
『私は別に言い方を変える必要なんてないと思いますが?』
「いやだって……」
としばらくの間康生とAIの間でネチネチとした口論が続いた。
「――私が代わりに説明しましょう」
そして最終的にはそんな康生達を見かねて、エルがそっと手をあげたのだった。
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