第32話 ドラゴン討伐

『ドラゴンは今この位置にいます』

 AIがドラゴンの位置を康生に教える。

 しかし「この位置」という言葉はひどく抽象的でとても位置が分かるとは思えない。

 だが実際、康生にはしっかりと伝わっている。

「了解っ」

 康生は目元に手をやりドラゴンの位置を把握する。

 そう、今の康生はメガネを掛けているのだ。

 つまりそのメガネにAIからの情報が送られ、ドラゴンの位置が正確に分かるというシステムなのだ。

「じゃ、いっちょいきますか!」

 そう言って康生はドラゴンの正面に飛び出す。

「ガァッ!」

 いきなり飛び出てきた康生にもすぐに反応を示したドラゴンだが次の瞬間、キィンンという音が響く。

 康生はドラゴンの前に飛び出ると同時にドラゴンの目に向かって小さいサイズの閃光弾を投げたのだ。

 小さいサイズなのでそこまで目にダメージが入らなかったが、それでも康生がドラゴンの視界から外れるには十分だった。

「ガァァ」

 するとドラゴンにも知性があるのか、康生を見失うと同時にドラゴンは空に逃げるように翼をはためかせる。

 空にさえにげてしまえば砂埃も何も関係ない。

 恐らくドラゴンはそんな事を考えたのだろう。

 ――だがそれは康生の予想の範疇の行動だった。

「今っ!」

 短い声と共に康生の手から細長い針が飛び出す。

「ガァァッ!!」

 針は寸分違わずドラゴンの翼の付け根部分に刺さる。

 するとドラゴンはバランスが崩れたようにその場に倒れ込む。

「よっし!命中!」

 康生は小さくガッツポーズをする。

 ――ちなみに今何が起こったのかを説明しよう。

 康生はドラゴンから姿を消すことにより、次のドラゴンの行動を待った。そしてドラゴンが空に飛ぼうとしたのを見て康生はすぐに胴体から翼につながっている筋肉部分を見つけ、そこに針を飛ばしたのだ。

 針は康生の狙い通りの場所に刺さり尚且つ胴体と翼をつなぐ大事な神経部分に刺さることによりドラゴンは片方の翼のコントロールが出来なくなるその場に倒れ込んでしまったのだ。

「ガァルル!」

 ドラゴンが唸るように鳴き声をあげる。

 その目は完全に康生をロックオンしていて攻撃の準備をしていた。

 だが康生はそこから逃げることはなかった。

「お願いしますっ!」

 逃げる代わりに声をあげた。

「ガァッ!!」

 するとドラゴンの攻撃態勢が解かれる。

 見るとドラゴンの背後では白い鎧の女が長刀で攻撃を繰り出していた。

 すぐにそのことに気づいてたドラゴンは白い鎧の女を排除しようとする。

 だが同時に大きな隙を康生に見せることになった。

「これで終わりだっ!」

 ドラゴンが背後を振り向く隙をつき康生は高く飛び上がる。ドラゴンの目の前に。

 するとドラゴンは康生を迎撃するために大きく口を開く。

 しかしそれは康生の狙い通りの反応であり、康生は手に持っていた丸い何かを口に放り込んだ。

「ガッ!?」

 ドラゴンが咄嗟に口を閉じると、突然全身がブルブルと震えだした。

 かと思ったら次の瞬間、ドラゴンは全身の力が抜けるように再度その場に倒れ込んだのだった。

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