第31話 特製グローブ
「おっと、危ね!」
真っ直ぐ飛んでくる火の玉を康生はギリギリの所で避ける。
だがその表情はどこが余裕の顔を浮かべていた。
「その攻撃は昨日見切ったばかりだからもう効かないよっ!」
しゃべりながらも攻撃は続いてくるので、再度危ない所で避ける。
しかし避けるだけではドラゴンを倒すことが出来ない。
当然そんなことは康生は分かってる。
だからこそ康生は攻撃を避けると同時にぐっと足に力を入れる。
瞬間、ポンッ。という音と共に康生の体がその場から消えるように真っ直ぐと飛ぶ。ドラゴンの腹めがけて。
「とりあえず降りてこいやっ!」
かけ声と同時に拳をドラゴンの腹に打ち込む。
しかしドラゴンは鱗に覆われている。人間の拳一つでダメージが入るわけがない。
「グァーーッ!!」
だが次の瞬間ドラゴンは呻き声をあげる。
それもそのはず。康生が打ち込んだ拳にはボクシングなどで見かけるグローブがつけられていた。
そして当然のようにそのグローブはただのグローブではない。
「どうだ!俺特製のグローブパンチは!」
叫びながらもグローブはみるみるドラゴンの腹に食い込んでいく。康生が何もしていないにも関わらず。
その秘密はグローブの構造にあり、康生の改造により先端が圧縮された風の力により飛び出す仕組みになっている。
他にも康生の靴にも同じような仕組みが組み込まれており、圧縮された空気を爆発させる事で空中のドラゴンの元へとやってきたのだ。
これは康生が地下室で編み出した技術の一つだ。空気というどこにでもあるものを使ったエネルギー。これは地下生活でなによりのエネルギー源となった。
「ドラゴンが降りてきます!すぐに退避してください!」
その下ではエルがドラゴンの様子を観察していた。
そしてエルの指示通り白い鎧の女は、エルと共にドラゴンから距離を取る。
「了解!」
エルの指示を聞いた康生もすぐさま反応し、再度靴を使って空中を移動する。
「ガァーー……」
ドラゴンが着地すると同時に一斉に砂埃が発生する。
しかし距離を取っていた康生達はその影響を受けることはなかった。
「エル。この砂埃の中、ドラゴンは俺たちの事って見えるのか?」
そして康生はそれさえも利用しようと頭を巡らす。
「いいえ、ドラゴンも視界を遮られたら何も見えないわ!」
だからエルもすぐに康生の質問に答える。
「おっけ、じゃあすぐ行きますか!」
康生は再度拳を構える。
「ちょっと待て!この砂埃で見えないのは私達も一緒だ!」
白い鎧の女の声で康生を止める。
しかし、
「大丈夫俺にはコイツがいるから」
康生はスマホを取り出して答える。
「お姉さんは砂埃が消えたら、ドラゴンの周りで攻撃をして少しでも注意を散漫させてくれ」
康生はそれだけ言うとすぐに砂埃の中へと突っ込んでいった。
「――一体なんなんだあの少年は」
そんな康生を見て白い鎧の女は小さく呟く。
だがその声はすぐに聞こえたドラゴンの声によってかき消された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます