第30話 ギリギリの戦い
「くそっ!」
飛んでくる火の玉をギリギリの所で避ける。
ドラゴンの目の前に飛び込んではや数分。
その間いくつのも死の恐怖を味わった。
だがまだこうして生きている。足が地面につき体を支えている。
だから女は必死に動く。
背後の少年少女を逃がすために。
そしてふと考える、二人は無事に逃げてくれたのかと。
少年の方はきっと逃げてくれているだろうが、少女の方はもしかしたらまだいるのかもしれない。
そこまで考えてふと少女の事を考える。
正直あの少女が異世界人だと聞いて驚いた。しかしあの少女は私達の為にドラゴンを止めようとしてくれていた。
だからこそあの少女は味方なのだと思った。いくら異世界人だとしても。
そう思ったから女はこうしてドラゴンの前に飛び出たのだ。
エルという貴重な異世界人を守るために。
「ガァッ!」
その間にもドラゴンは火の玉を繰り出してくる。
「しまった!」
考え事をしていたせいかドラゴンの攻撃に気づくのに少しだけ遅れた。
ドラゴン相手にそんな一瞬な隙ですら命取りになる。
そうは分かっていても白い鎧の女は幾度もの攻撃により、精神力を失っていたためそんな隙が生じてしまったのだ。
「くそっ!」
恐らく今から動いても間に合わないだろうと白い鎧の女は察する。
それでも少しでも傷を減らそうと遅れながらも回避行動を取る。
限界まで鎧の出力をあげて横にずれる。
だがやはりいくら限界までスピードをあげたとしてもその攻撃は避けられようになかった。
(ここまでか……)
白い鎧の女は自らの命が尽きるのを悟り、同時に背後の少年少女達の無事を祈る。
だがその瞬間、
「消火っ!」
康生の声が響く。
それと同時にピューッという音と共に白い鎧の女の目の前に迫っていた火の玉が消滅した。
(一体何が……?)
突然の事に白い鎧の女は驚く。そしてすぐさま声のする方を向く。
するとそこには少年が銃を構えて立っていた。
「いや〜危なかった!まさかこの水鉄砲が役立つとは……」
『ほんとですご主人様。私もそんなガラクタなんか意味がないと思っていましたが、それは間違いだったみたいですね』
「って!ガラクタっていうなよ!これでも銃の形状とか拘りつつも極限まで水の威力をあげたんだぞ!」
「お、落ち着いて!目の前にドラゴンがいるんだよ!」
――なんとも緊張感のない会話をする姿を見て白い鎧の女は思わずポカンと口を開けていた。
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