第34話 応援しよう

「――なるほど、そんな事があったのか」

 エルが説明し終わると白い鎧の女はゆっくりと頷く。

 一度に言われても理解が追いつかないのか、ゆっくりと頷きながらも頭で考え込んでいるようだ。

 それを康生とエルはじっと待つ。

「……そうか」

 やがて白い鎧の女はゆっくりと康生の方に向く。

「まさかこの世界で、あの大事件を知らずに暮らしていた者がいたなんて思いもしなかったよ」

 その言葉からは驚き、そして少し呆れの感情がか入っているように思えた。

 そしてそのまま白い鎧の女はエルをじっと見据える。

「――そして君は異世界人、でよかったんだね?」

「えぇ、そうよ」

 じっと見据える白い鎧の女に対して、エルは怖じけずくことなくじっと見返す。

 しばらく二人の間で強い視線が交わされる。

 そして先に視線をずらしたのは白い鎧の女だった。

「――この場合、正直私にはどうしたらいいか分からない……」

 どうやらエルの対応に困っているようだった。

 それもそうだ。白い鎧の女はどこか部隊の隊長だという事を言っていた。

 だとすれば白い鎧の女はそこそこ地位は高いのだろう。しかもそもそも部隊という組織が作られた理由は異世界人に対応する為だろうから、余計にエルの対処に困ることになっているのだろう。

「一つ、聞いてもいいか?」

 そんな中、白い鎧の女はエルに質問を投げかけようとする。

「えぇ、いいですよ」

 エルはゆっくりと頷く。

「君は――いや、君達は一体何を目的にしているんだ?」

 白い鎧の女はエルを値踏みするように、鋭く、そして警戒するような視線を向けていた。

「それは…………私たち異世界人と人間が仲良く暮らせる平和な世界を作ることです」

 そんな視線にも怯まずエルははっきりと口にした。

 エルにとっては先日その目的をバカにされたばかりで、相当な精神ダメージを受けているはずだ。

 それでも白い鎧の女の威圧感に負けることなくエルはしっかりと自分の口で自らの目標を言ったのだ。

 そのことに関して康生は少しだけ感動しながらも、白い鎧の女の反応を待った。

「平和な、世界……か」

 小さく呟き、そして考え込むように目を閉じる。

 一体その間、白い鎧の女の中で繰り広げられている思考回路は康生でさえも読み解くのは出来ないだろう。

 そしてしばらく様子を伺っていると白い鎧の女はゆっくりと目を開ける。

「分かった」

 ゆっくりと呟き、そしてすぐに口を開く。

「私もその夢応援しよう」

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