第2話 オナラが『ぷ〜』
私の隣の席の西園寺修造君。略して、しゅう君。私、桐生ルリの大好きな人。好きになってからまだ日が浅いけどね。
しゅう君の見た目はフツメン。ショートカットで黒髪の男の子。身長も175センチくらいかな? 私より10センチ高く感じるからね。体型は太ってもいない、痩せてもいない。その他大勢のモブのクラスメイトって感じだよ。
美少女には興味が無いっぽい。というか誰にも興味がなさそう。いつも一人でいるぼっち君。でもぼっちというより孤高の人。
そんなしゅう君の机に私は机をピッタリとつけている。普段は一人ずつ離れているけどね。
今は本日最後の授業中。私は教科書を忘れたのでしゅう君と一緒に教科書を共有中。ラブラブだね。……個人的な感想だけど。
教科書を忘れたのは言うまでもなくワザと。だってしゅう君のにおいを嗅ぎたかっ——じゃなかった、そばに居たかったから。
だけど今は私の人生最悪の大、大、大ピンチ中。体から空気が出そう。——オナラが!
人はオナラは出る。当然学園一の美少女の私も出る。だって人間だもの。
昨日、家の近くに移動販売車の焼き芋屋さんが来た。私は買って食べた。それが原因?
焼き芋のオナラは臭く無いって聞いた事はあるけど音はするよね?
もしオナラが出たらすぐ隣のゼロ距離にいるしゅう君にバレる。超恥ずかしい。
くっ、授業が終わるのはあと10分。私、がんばりゅよ! 頑張って我慢する!
私は我慢出来る絶対の自信があった。学園一の美少女が学校でオナラはしてはいけない。イメージが崩壊する。
『ぷ〜』
考え事をしていたら一瞬だけ油断した。人生で初めて人前でオナラをした。家族の前でもオナラはした事無かったのに!
オワタ……しゅう君に聞かれた……そして前の席の子にも聞こえたはず……さらにその前の席にも……かなり大きな音だった……
前の席の女の子と男の子がコチラをチラッと見た。さらにその前の席の女の子達はボソボソ話しをしている。
私はしゅう君をチラッと見た。無表情で前を見ている。
うう、最悪……あと10分だったのに……恥ずかしい……穴が有ったら飛び込みたい。
私は下を向いてノートを見ていた。涙が出そう。
「
今、授業を担当している先生の声が聞こえた。確か去年赴任して来た新人の女性の先生。
私は顔を上げしゅう君を見た。何故か手を上げている。
「先生、トイレに行ってもいいですか?」
しゅう君の言葉に教室がざわつく。
「えっ? さっきのオナラの音、やっぱり西園寺君?」
「当たり前だろ? 桐生さんがオナラなんてしないだろ?」
前の席のクラスメイトがコソコソ話しをしている。私もオナラくらいします。今しました。
しゅう君。今トイレに行きたいなんて言ったらオナラは自分がしたって言っているようなものだよ。何故今なの?
「西園寺君、もうすぐ授業が終わるから我慢出来ないかな?」
先生がしゅう君にそう言った。先生の所まではオナラの音は聞こえていないみたい。
「すみません。昨日からお腹の調子が悪く、さっきオナラが出た時にう◯こも出た可能性があるので確認したいです」
私を含めクラス全員がしゅう君を見た。彼は何食わぬ顔の無表情。
えっ⁉︎ どうしてそんな事を言うの? 恥ずかしくないの? そこまで言わなくてもいいんじゃない⁉︎
「そっ、そう。それは大変。すぐトイレに行って」
「はい。ありがとうございます」
先生の顔が引きつっている。しゅう君は無表情で教室を出て行った。
しゅう君のいなくなった教室はザワザワしている。しゅう君がうん◯を漏らした話をみんなしている。
「はい。みんな静かにして。授業続けるわよー」
クラスはザワザワしたまま授業は終わった。先生も仕方がないか。みたいな顔をしてた。
授業が終わったらしゅう君は何事も無かった様な顔で戻って来た。そして自分の椅子に座った。
クラス全員がしゅう君を見てコソコソ話をしている。あからさまに大きな声で悪口は言っていない。
でも『◯んこもれぞうに改名だな』とか『ぶりぶり寺ぶりぞう』とかこっそりと数名の男子が言っている。
女子はグループごとに反応が違う。汚い物を見る目。心配してコソコソ話。意に介せず全く違う話をしているグループ。
私はオナラは自分がしたと言おうと思い立ち上がろうとした。何故かしゅう君が手を引っ張った。それにより立てなかった。
「しゅ……
私はしゅう君に残るように伝えた。彼は無言。前を見ている。私はピッタリとつけていた机を元に戻した。
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