過去との出会い(2)
「お願い?」
「ええ、貴方様に直していただきたい従者がおります」
「でもそれならそれを作ったモデーラにやって貰えば良いのではないですか?」
「それは……できないのです」
予想していた答えということでいいんだろうか、これは。
俺は思い切って聞いてみることにする。
「あなたはルッカ?それともエルニスですか?」
すると彼女は驚いたような表情をした。
「どうしてその名前を?」
「俺も、その本を読んだから……そこに書かれているのはあなたたちのことなのでは?」
「……」
すると彼女は押し黙ってしまった。
あれ?違ったのか?
でも彼女が俺を見る目が少し変わった気がする。
「どうか、しました、か?」
俺の声が少しぎこちなくなる。
もし予想が外れていたら、ただの変なやつだよね。
「いいえ……構いません。一緒に来ていただきます」
「え?」
言うが早いか彼女は俺を抱え上げ肩に担ぐと図書館の玄関に向かって歩き始めた。
俺は手足をジタバタさせて抵抗を試みるが、全然力が及ばないようだ。
と、突然彼女は何かを避けるように横っ飛びにジャンプし、それとほとんど同時にアルテミスが上から音もなく現れたかと思うと拳を打ち下ろす。
俺を担いだままの彼女はアルテミスを睨みつけた……ような気がした、何しろ俺は肩に担がれて彼女の後ろしか見えない。
「あなたは、誰ですか?」
「私のモデーラ様を返しなさい」
アルテミス、その言い方はどうなの?
「申し訳ありません。それはできません」
アルテミスは背中に構えたライフルを手に取り先端にナイフを取り付け、構える。
「ならば、力づくでも」
一瞬の睨み合いの後、アルテミスは弾かれるように接近して銃剣で突きを放ち、俺を抱えた彼女もそれに応じるようにバックステップでひらりと躱す。
この彼女、身体能力はアルテミスと同等かそれ以上なのでは?
続け様に放たれるアルテミスの突きを躱し続ける彼女。
銃剣の先端が俺をかすめそうになるけど、アルテミスのことだから俺に当たることはないだろう……と、信じたい。
二階まで大きくジャンプして距離を取ろうとした彼女にアルテミスは銃剣をやりのように投げる。
それを彼女は無理やり体を捻って躱そうとするが、空中では流石に躱しきれずその腕に銃剣が突き刺さった。
その反動で俺は取り落とされ落下する。
あわやというところで駆け寄ったアルテミスにキャッチされ俺は床に叩きつけられるのを回避できた。
二階から吹抜け越しに見下ろす彼女は、腕に刺さった銃剣を抜くとアルテミスの足元に投げてよこし、俺たちを見つめる。
「いずれお迎えに上がります」
そう告げると彼女は二階の奥に姿を消した。
階段で二階に上がってみると明かり取りの窓が開けられていた。
どうやらここから外へ逃げたらしい。
「追いますか?」
アルテミスが指示を求める。
「いや……今はいいよ」
彼女がああ言った以上、いずれ遠くなくまた再会することになるんだろう。
とりあえず今は顛末を報告しにダンバーレのもとへ戻ろう。
<<つづく>>
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