過去との出会い(1)

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お知らせ:しばらくの間、公開サイズを小さくして公開頻度を

上げてみようと思うので、今回から一エピソードは短めになります。

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「ルーデングームの封じられた姉妹」は

 とある事件の顛末を記録したレポートだった。

 感情などを交えず、淡々と綴られたその内容を簡単にまとめると、だいたいこんな感じだ。


「50年ほど前、ルーデングームというモデーラを生業とする家系があった。

 ルーデングームの当主には妻とルッカとエルニスという二人の娘がいたが、ある時その娘たちが事故にあう。

 娘たちを亡くした当主は工房に引きこもり娘たちに似せた従者を作った。

 それは周りの人々にはそう言われなければそれが従者だとはわからないほどの精巧なものだった。

 だがある時ルーデングーム夫人がその従者によって殺害されるという悲劇が起こる。

 悲嘆にくれた当主はいずこかに姿を消した。

 人々は総出で従者を捕らえ火刑台にかけて破壊した。

 破壊された従者の残骸は鉄の箱に詰められ、沼に沈められて事件は幕を閉じた」



 ***



 アルテミスを離れたところで待機させて、俺は本を読む女性のそばへ歩み寄る。


 ハルツェンポルスの言うようにそこにいたのは長い銀髪の女性だった。

 彼女は全身を覆うような丈の長いコートをきこんで、傍にさっきの本を乗せたワゴンを置いて机に向かって座って本を読んでいる。


 さてどうしたもんか。

 いきなり取り押さえるのは勘違いだったら大変なことになるし、正解だったとしても返り討ちに合いそうだし。

 とりあえず声をかけてみるか。


 俺はその女性の傍らに立った。


 ……えーと……。


「こんにちわ、その本はおもしろいですか?」


 こんなのでいいんだろうか?


「……?」


 その女性は訝しげな表情で俺を振り返る。

 その姿はごく普通の少女のように見え、予想よりもずいぶん若い気がする。


 さて、この娘は人間だろうか?それとも従者だろうか?


 ……。

 返事はないな。

 その目はちゃんと俺をみているけれど、従者だから喋れないんだろうか?

 それとも喋らないだけ?


 ここは自己紹介でもしておくか。


「俺は……」


 と、突き刺さるような視線が……。

 振り返ると物陰からアルテミスが悔しそうな表情で葛藤しながらこっちを見ていた。

 思わずため息。

 アルテミスが飛び出してきて紹介しないように、ここは妥協しよう……。


「……俺はモデーラです。俺もその本に興味がありまして……」


「貴方様はモデーラなのですか?」


 突然彼女が喋った。


「貴方様は従者を直せるのですか?」


 どう答えたものか。

 俺は賭けに出ることにした。


「ああ、もちろん。作るのも直すのも得意だよ」


 すると彼女は立ち上がり、俺の手をとって言った。


「貴方様に、是非お願いがあるのです」


 彼女のその手は表面が黒く焼け焦げていた。




 <<つづく>>

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