過去との出会い(3)
詰所に戻る頃にはすっかり日が落ちて夕闇が辺りを覆い始めていた。
「もどりましたな。何かわかったことは?」
ダンバーレは詰所のドアを開いた俺を振り返って言う。
「例の従者が何者か突き止めました。ほぼ間違い無いでしょう」
「なんですと!?」
驚いて立ち上がるダンバーレ。
俺は犯人に関する俺の見解を話す。
「つまり貴方は50年前に失踪したルーデングーム当主が犯人であると?」
「そう考えると納得できるんですよ。
人のようにしか見えない従者を作る人物はごく限られています。
俺が図書館で会ったのは喋ることができるほどの精巧な従者でした。
ルーデングームが作った従者は亡くなった双子を象ったもので、そう言われるまで従者であると気がつかれなかったそうです。
つまり今盗みを働いているのは、当時火刑で破壊されその後に修復された双子の従者のどちらかで、盗み出されているのはもう一方の残骸でしょう」
「だとしたらなぜ50年も経った今なのですかな?」
「それは……まだわかりません。修復に時間がかかったのか、なにか他の理由か」
「ふむ、まあ理由は当人に聞くしかないでしょうな。ルーデングームについてはこちらでも調べてみましょう」
その夜、寝床についたあとダンバーレに指摘されたことを改めて考えてみた。
なぜ50年なんだろう?その期間になにか意味はあるのか。あるいはもっと別の理由があるのか。
だが一日歩き回った疲れが出たのか、俺はすぐに眠ってしまった。
翌朝、俺とアルテミスは双子の片割れの隠れ家を探すべく、前回の逃走経路を探っていた。
「足跡から追跡するのは困難かと思います」
判明している逃走経路を書き込んだ地図を片手に街を歩き回るが、アルテミスでも足跡らしいものはほとんど見つけられなかった。
「少し自信がなくなってきたな」
「どうなされましたか?」
「ルーデングームが作った従者は亡くなった双子の代わりだったはずなのに、そんなに能力が高いのはおかしい気がしてさ」
「別の従者かもしれないということですか?」
「うん。そうなるとこれまでの推測が全部崩れてしまうなあ」
「私はモデーラ様の推察は確度が高いように思います」
「ありがとう、アルテミス。そうだね。迷っていても仕方がない。今できることをやろう」
「はい、それがよろしいかと」
それから収穫もなく散々歩き回った後、いったん詰め所に戻って昼食を摂りながら考えをまとめる。
「彼女の侵入と逃走経路は屋根伝いだろうというのはいいとして、どこに隠れているんだろうな」
「ルーデングームの屋敷などはどうでしょうか」
それを聞いていたダンバーレが会話に加わった。
「ルーデングームの屋敷は50年前の事件からほどなく人手に渡った挙句に火事で消失したらしい。今では焼け落ちた廃墟があるだけで、人の暮らせる場所ではないな」
それを聞いたアルテミスは少し考える。
「ルーデングームに由来しない場所に隠れているとすると、発見は困難を極めるかと思います」
「もしそうなら隠れ家を発見するのは追跡するしかないわけか……」
「まあ、万が一ということもあります。このあとにでもルーデングーム邸跡を調べに行ってみるのもよいでしょうな」
そうだな。
俺はダンバーレの提案に従うことにした。
<<つづく>>
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