2話

 魔法――それは、体内にある魔力(マナ)と空気上にある四大精霊の残りカスの力との応えによって、おこる現象。


 遥昔、人類も使えたがそれは魔族との戦争上でのことであったはず。

 魔族との戦いは永遠に終わりが見えなかったので、英雄のフーゴがどこかに敵を封印したという伝説もある。


 平和になってからは魔法が危険だと判断され、王命によって使える者は人間の国から追放されることになってしまった。

 現在、他種族とも距離を取っているので、昔は知られていた魔法は遠い存在になった。


 それ以前に、人間はあまり魔法の適正がなかった。

 だから、使えるとしても一種類。

 それなのに、ミクサが使えるのは基本的に考えられない。


 その事を冷静に思い出しながらアレオはミクサの元に行った。


「ねぇ、お母さん」

「なに? アレオ」


 アレオは、辺りに張った魔法の結界を消されていることについて言及しようとしたが、外で鶏の鳴き声が聞こえた。

 それは魔族が襲い掛かる前に起こった兆候でもあったので、アレオは店主に発言した。


「すいません。ちょっとお母さんと話したいことがあるので、ちょっと外に出ますね」

「あ、うん。服を仕立てておくからゆっくりでも大丈夫だからね」


 外に出ると、人払いがされているかのように誰もいなかった。

 少し機嫌が悪いミクサは聞いてきた。


「なに、アレオ? お金なら大丈夫よ。それとも、他の問題?」

「お母さんこそなんで“魔法”が使えるの?」

「プッ! 何言っているのよ? ま、魔法なんておとぎ話じゃあるまいし使えるわけないじゃない! いきなり何を言い出すの?」


 しばらく魔法の形跡が残っている手を見てみると、そこには魔力が使った形跡があった。

 何か違和感がある、そう感じてお母さんの性格である種族を思い出す。


「あ! もしかしてお母さんは“半神半人”なの?」


 “半神半人”――神と人間の混血の種族。

 人間が好きで人間に紛れて暮らしている。

 主に娯楽を楽しむ種族でもある。


 “半神”という単語が出たので、ミクサは裏通りにアレオを連れていった。

 連れていかれたと同時、アレオは拘束された。

 正確には彼女が地面に膝をついてアレオを壁に押し付ける。


 ミクサから逃げ出そうとしても力で押さえつけられている。


「あなたは何者なの? アレオでもまだそこまで知識はなかったはずよ? 一体、誰なの?」

「そっちこそなんで人払いの結界を張ったの?」


 質問を質問で返すと、ミクサの力が強くなった。

 寒気が走り上を見てみると、水魔法の上位魔法にあたる氷魔法の刃があった。


 結界を張った所為でお互いに疑心暗鬼になっている。


 刹那――。

 爆発音が辺りに鳴り響き渡る。


 魔族のことを頭の片隅に置いておいたのに早い。

 ミクサの力が一瞬緩んだのを逃さなかったアレオは拘束から抜け出して、彼女に手を差し伸べた。


「魔族が来たから一緒に逃げよ。半神ならアイツらの恐ろしさは知っているよね? 言い伝えで首を刎ねない限り死なないと言われているからさ。早く!」


 ミクサは首を横に大きく振る。

 突然、まるで魔族の恐ろしさを知っているかのように、うずくまって彼女自身の体を守ろうとしていた。


 瞬間、上から人が降ってきた。

 魔力探知を使っていたアレオはその人を受け止める。

 急いでアレオは治療魔法を施そうとしたが、手に負えない状態だったので苦しまないようにして目を閉じさせた。


「う、嘘よ! 魔族は封印されたはずよ! あ! そうなのね。これは夢なんだわ。じゃないと説明がつかないもん」


 アレオはミクサの元に行った。

 アレオは一瞬戸惑いながら思いっきり頬をつねった。


「これでも夢だと思うの? お母さん、しっかりして! これは夢じゃない! 現実!」


 すると、ミクサは体が震え始めた。

 アレオは一人で少しでも数を減らすために戦おうと思い、ここに少し強い結界を張って風魔法で空を飛んだ。


「飛翔(フライ)」


 飛翔(フライ)――周りにある空気を身に纏って飛ぶ風魔法。


 あちらこちらで魔人が空を飛びながら人を殺したりしていた。


 魔人は青い皮膚、エルフのような長い耳の特徴を持っているが、胸や脚などの服装な露出型のシャツとパンツを着ている。


 理性がないのか、動かなくなっている人を壊れた玩具を更に壊すように何度も地面に叩き付けている。

 それなのに、仲間割れはしていない。


 服屋で張っていた結界が破れた音がした。

 魔人の対処をしていたら拉致が明かないので、目で見える範囲で敵の魔力探知を使って対象を決めた。

 次の瞬間、アレオは右手に炎魔法を左手には風魔法を使って合体魔法を唱えた。


「浮遊する炎の柱(フロー・バーニング)」


 浮遊する炎の柱(フロー・バーニング)――上空に作った炎の柱を作り、風魔法で対象だけをその場所に飛ばす合体魔法。


 魔人が絶命する中、下から魅惑的な女性の声が頭の中に聞こえてきた。


『さぁ、お人形さん、あの厄介なガキを殺してくれる?』


 下から氷魔法で攻撃してきたミクサの方を見ると、そこには簡素な布で胸とズボンを着ている女魔人がいた。

 怒り心頭しアレオはその女魔人に突っ込んだ。


「お母さんから離れろ!」


 しかし、彼女の攻撃でも止まらないと思った女魔人はどうしてか魔法で爪を長くして、すぐにミクサの首を跳ねた。


 アレオはミクサを止めたくて死なないでほしいから、懸命に飛んだ。

 でも、結果はどうであろうか。

 ダメだった。


 飛んでいるミクサの首を見て、アレオは声にならない悲鳴を上げた。


 その後の記憶は覚えていない。


 だけど、アレオはあの時――。

 そうミクサが怯えている時に一緒にいてあげればよかったと後悔し、アレオはやり直したいと心の底から願った。


 すると、アレオは不思議な空間にいたことに気付く。

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