第5日目 兄ちゃんとクッキング

ザーザー ゴロゴロ


”あーぁ雨かぁ。今日には止むと思ったんだけどなぁ。”

昨日の晩、ショピングモールから帰った頃から空から怒り狂ったかのように雨が降り続いていた。

”ねぇ兄ちゃん、今日どうする?どっか行くの?この雨じゃお出かけ出来ないよね。”

”あーそうだなぁ。雨ならなぁ。出かけるのはキツイなぁ。”

”だよね。うーんどうしようか。出かけられないとなると家にいるしかないよね…。暇だなぁ。トランプとかあるかな?”

私が立ち上がり、棚の中を探そうとした。

”やめろっ!!!触るなっ!”

”へっ?”

兄ちゃんが大声で怒鳴った。

”兄ちゃん!?えっ?どうしたの?私なんか触っちゃいけないもの触った?あ、え…ご、ごめんなさぃ。”

”あっいや、違うんだ。兄ちゃんが間違えた。怒ってないよ。大丈夫。それより、俺とクッキングしないか?ほらっ!”

そう言って兄ちゃんはレシピ本を私に渡してくれた。

そのレシピ本には基本の卵焼きなんかからショートケーキみたいなパーティメニューまで様々なメニューが載っていた。

”うわぁ〜すっごい!!!ケーキに、アイスに…めっちゃ作れるじゃん!!すっごい!!!”

”な?これすごいだろ?この前古本屋で見つけたんだ。今日はこの中から好きな物選んで作ってみよう。”

”えっとねぇじゃあこれ!このキラキラしたクッキーが作りたい。”

私はステングラスクッキーのレシピが載ったページを指さし、兄ちゃんに見せた。

”おっ?なになに…ステンドグラスクッキーか。

うん、これなら作れるぞ!”

”ほんと!?やったー!!!”

”あぁ大丈夫だ。じゃあ今から作るぞぉ?さぁ手洗ってこいっ!”

”はぁーい!”

私が手を洗っている間に、兄ちゃんが材料を準備してくれた。

薄力粉に砂糖に卵、バターと普通のクッキーと材料は変わらないみたいだ。

もちろん、飴も用意してあった。

”よしっじゃあ始めるか!”

そう言って兄ちゃんはバターと砂糖を混ぜ、卵を加え、薄力粉を振るいあっという間にクッキー生地を作りあげた。

”えっ?!はっ?えーー!!!早っ!もうクッキーの元出来ちゃった!?”

”えっ!兄ちゃん凄いね!料理得意なんだ?!すごいっ!”

”ははっまあな。兄ちゃん、料理は得意なんだ。空美は…そうだな、飴を袋から出しといてくれ。”

”えー私もうちょっとなんか出来るよ?兄ちゃん1人で作るのなんて大変でしょ?”

”いいんだ、いいんだ。空美はそれだけやってくれれば。兄ちゃんは、久しぶりに料理をするからちょっと凝ってみたいんだ。だからそれ終わったらリビングに行っててくれないか?出来上がりを驚かせたいんだ。”

”分かった。でも凝るのなんて難しいんじゃない?私、まっ黒焦げになったら食べないからね〜‪w頑張ってよ兄ちゃん!”

”ははっ分かった。焦げさせやしないさ。さぁじゃあ隣の部屋で待っててくれ。ちょうど今空美の好きなドラマの再放送やってる時間だぞ?”

”えっちょ兄ちゃん!それ早く言ってよ!”


バタバタ…。

パチッ。

”ふー間に合った。今から始まるみたい。よかった〜”



「よかった。まだバレてない…。もう少しだけ、もう少しだけでいいからこのまま続いてくれ。頼むっ…。」



~50分後~

”空美〜出来たぞー!!!こっち来て〜”

”ほんとっ!?うわぁ〜すごい!いい匂い。”

”だろ?”

兄ちゃんは、焼きたてホカホカのクッキーを見せてくれた。

”あっ!型抜きクッキーも作ったの?ウサギに、ネコ、ハートの形もある!すごい!すごいね、兄ちゃん!”

”よかった。喜んでもらえて。さぁ食べよう。”

”うん!”

”じゃあちょっと先にクッキー持って隣の部屋に行っててくれないか?俺、ここを片付けてから行くからさ。あと、このうさぎとステンドグラスクッキー少し貰うぞ?”

”なに〜兄ちゃん味見でもするの‪wって作ったの私じゃないんだから了解取らなくたっていいでしょ‪w”

”まぁそうだけど一応、空美にあげたクッキーだからな。”

”もー変なとこ律儀なんだから。はいっ!うさぎと、ステンドグラスクッキー。2枚ずつあるからね!”

”ありがとう。空美”

”うん、じゃあ先行ってるね!”


”お待たせ〜”

”遅い!何してたの?!結構前に水の音止んだからすぐ来ると思ったのに!”

”ごめんごめん。ちょっと2階いってて。”

”2階?なんか用あったの?”

”それはな〜ジャジャーン!これを取りに行ってましたー!!”

”あっ!それは!”

兄ちゃんが持っているものは兄ちゃんお手性のミルクティーだった。私は、ミルクティーが苦手だ。何だか薬の味がする。だけど最近ミルクティーが流行っていて、何処も彼処もミルクティー1色なのだ。友達に勧められるけど飲めない、飲めないと話題についていけない…。困り果てた私を救ってくれたのは兄ちゃんだった。

兄ちゃんは、私の話を聞いてくれ私が苦手な風味を極力押えた特性ミルクティーを作ってくれた。甘すぎずとても美味しい、それを兄ちゃんが作ってくれたのだ。


”これ、空美好きだろ?ほらまた作っておいてやったぞ。”

”ありがとう!兄ちゃん!私これ大好きっ!”

テーブルの上には兄ちゃんお手製ミルクティーに、兄ちゃんの手作りクッキー。

””いただきまーす””

ステンドグラスクッキーはキラキラして綺麗で甘くて、とても美味しかった。

”モグモグ…。美味しー。兄ちゃんすごいね!こんな美味しいの作れるなんて!”

兄ちゃんは満足そうにニコニコうなづいてくれた。

”はぁ…。ママ達もここにいればよかったのにね。そしたら兄ちゃんのクッキー食べれたのに。”

”まぁしょうがないよ。父さんと母さんは今忙しいんだから。”

今、家にはパパとママがいない。

パパは会社を立ち上げたんだ。

その名も<べアカンパニー>

ママがテディベアを好きだからという安易な理由が会社名の由来だ。

ベアカンパニーでは、宝石類を主に扱うらしい。

って言っても私は詳しいことなんにも知らないんだけどね。


”まっしょうがないか。パパもママも忙しいもんね。また家に帰ってきた時、作ってあげようよ!”

”あぁいいぞ。その時は、空美も一緒に作ろう?”

”うんっ!約束!”

”あぁ約束だ…。”

この時、兄ちゃんの顔がちょっと歪んだ事に私は気づかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る