第2日目 兄ちゃんとパンケーキ屋

”さぁーてどこ行くか?”

家を出てしばらく歩いていた時、兄ちゃんがそう言った。

”へっ?ちょっと待って!?どこ行くかとか決めてたんじゃないの?!えっ?計画もなしに家飛び出して来たの?!もう午後だけどそれって大丈夫なの?”

”そーwどこ行くかなんて決めてねー‪。だってまさか空美が俺の提案OKしてくれるとは思わなかったもん‪w”

”ちょっと兄ちゃん?!それは無いんじゃない?!兄ちゃんが私の時間買うって言ったんだから計画ぐらいしてよ!!”

”わるいわるい、このとーり許してよ‪。な?今日は俺が計画してなかったお詫びにどこでも好きなとこ連れてってやるから”

兄ちゃんは胸の前で手を合わせ、笑いながら謝ってくれた。

”んもー。兄ちゃんってばいい加減なんだから。んーでもそっか、今日はどこでも連れてってくれるんだ。やったぁ どこ連れてって貰おうかな〜”

”どこでもいいぞ。近場だろうが遠くだろうが連れてってやる”

”んーとね、あっ!じゃあパンケーキ屋さん行きたい!ちょうどおやつの時間だし‪、この前テレビで特集組まれてて美味しそーだなって思ったの。だけど値段お高めだし、連日大行列って言われてたし、行く機会ないなって諦めてた所なの!!そこでもいい?”

”あぁいいぞ。今日はパンケーキ屋さんだな。じゃあはパンケーキ食べにしゅっぱーつ!!!”

”しゅっぱーつー‪w‪w”


”とーちゃく!!!着いたぞ!空美!!!”

”あれー?ここかなぁ?んー?”

”えっ?どうした?ここじゃない?間違ってる?”

”いや、ここであってるはずなんだけどね、行列が無いから不安になっちゃって。お店はあってるはずなんだけどなんで行列がないんだろ?一昨日ぐらいのテレビで連日大行列って報道されてたのに…”

”んー?今日はたまたま混んでないだけじゃないか?平日だし、もう午後だしな”

”そうなのかなぁ?…んーまぁいっか。じゃあ兄ちゃん行こっ!早くパンケーキ食べよう!!!”

”あぁ”


~カランコロン~

「いらっしゃいませ、お好きなお席にお座り下さい。」

店内はシンプルながらもどこか温かみを感じるデザイン。

フワッと香る甘い香りが鼻をくすぐる。

席はテーブル席となっており、窓からの光が直接入り込む造りになっていた。

”座るのどこでもいいって、どこ座る?”

”兄ちゃん私あそこの席がいい!!!あの、窓辺の赤い椅子の席!”

兄ちゃんと私は窓辺の席につき、向かい合わせで座った。

「当店はお冷のサービスをセルフとさせて頂いています。あちらのウォーターサーバーからお冷をお取りください。 ご注文はお決まりですか?」

”えーとね、あっ!私これ食べたい!これがいい!”

「じゃあこれと、あとアイスコーヒー1つください。」

「かしこまりました。」

”えっ?兄ちゃん!?パンケーキ頼まなくていいの?こんなに美味しそうなのに?!”

”まぁ、メニューを見る限りだとクリームたっぷりだし、意外と大きかったしな。2つも頼んで食べきれなかったら大変だろ?だから空美の頼んだパンケーキを少し食べさせてくれよ”

”えーそんなに大きいかな?普通ぐらいに見えるけど…まっいっか!じゃあシェアして食べよう!!!”



「お待たせ致しました。ふんわりシュワシュワパンケーキと、アイスコーヒーでございます。パンケーキはこちらの木苺のソースをお好みでお掛け下さい。ご注文の品は以上でよろしいですか?ではごゆっくりお楽しみ下さいませ。」


そう言って運ばれてきたパンケーキは予想より大きく、隣に添えてあるクリームも見た事ない高さをしている。

”うわぁ〜でっかい!美味しそう〜。

ねぇ!兄ちゃん!!これすっごいね!!!”

弾力があるのかフォークでつついても潰れない。別添えのソースを掛けるとフワッと、いい香りが広がった。


”いっただきまぁーす!”

”んー甘いー!!めっちゃ美味しい!私、これ好き!”

”それは良かった。ってそんなに詰め込むなよ‪w”

”いいの!!!今はこの甘いのを口いっぱいで楽しみたいの!”

”そっか‪wまぁ誰もそれ取らないんだから味わってゆっくり食べろよ?”

”うん!”

兄ちゃんはアイスコーヒーを飲みながら私がパンケーキを食べている姿を眺めていた。

そう言えば、これって兄ちゃん楽しいのかな?

私は話題のパンケーキを食べられてとても嬉しいけど兄ちゃんパンケーキ食べずにコーヒー飲んでるし…。

パンケーキを食べながらふとそんなことを思った。チラッと兄ちゃんの方を向くと兄ちゃんはもうコーヒーを飲み終わり、私のことを見ていた。

”えっ!? んっ!!!”

”ちょっ!?空美?!どうした?!詰まったのか?!ほらっ水!!!”

私は兄ちゃんから奪い取るように水を受け取った。

”っはー。ふー治った。ってか兄ちゃんなに?!なんで私の事ジーッと見てるの?びっくりしたじゃん!!!”

”あーごめん。コーヒー飲み終わって、やることないなぁ、あー明日はどこに行こうかなって考えていたらさ、空美が幸せそうな顔でパンケーキ食べてるんだもん。そりゃ見たくもなるって。”

”もーやめてよね。恥ずかしいし、びっくりしたんだから!あとちょっとで食べ終わっちゃうから兄ちゃん外行ってて待っててもいいよ?退屈でしょ?”

”んーそれはいいや。空美が食べ終わるの待ってるよ。”

”そう?じゃあ待ってて。”



”ごちそーさまでした!”

店の外に出ると日は沈んでないものの、昼間の暖かい風とは違う冷たい風が吹いていた。

私と兄ちゃんは横並びになり、ゆっくり家に向かって歩いていった。

”もう日が沈むのかぁ。はやいなー時間経つのって…。

今日は楽しかったか?ありがとうな!一緒に居てくれて。明日はゲームセンターに行こうな!”

って兄ちゃんは笑いながら言った。

”ありがとう、奢ってくれて。すっごい美味しかった。明日はゲーセン?やった!!!UFOキャッチャーやろっと。”

”あぁだから今日は早く寝ろよ?明日寝坊したら行けなくなっちまうからな‪w”

”うん!あっそう言えば兄ちゃんは今日楽しかった?”

”俺…?うん、普通に楽しかったけど?どうした?やっぱ俺と一緒じゃ楽しくなかったのか?”

”ううん、そういう事じゃないの。ただ今日は私の行きたいとこに行ったでしょ?兄ちゃんパンケーキ食べてなかったし、なんか私だけが楽しんじゃった感あるし…。ちゃんと楽しかった?”

”そりゃもちろん楽しかったぞ?空美の幸せそうな顔見れたし…。パンケーキも少し食べれたしな。”

”そっか、ならよかった。よーしじゃあ早く家帰って明日の為に寝なきゃ!兄ちゃん!早く行こっ!”

私は駆け出し、兄ちゃんいる所より50mぐらい先でそう言った。

”ちょっ待てよ‪w‪w”

”はやくー!”


2人の笑い声が夕焼けの空に響いていた。


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