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ハッと目が覚めた。

またこの夢だ。

いつの頃からかはじまったこの夢は最初のころはたまにしか見なかったのに、最近は見る頻度が増している。

この夢を見るたびあたしは泣いている。

夢の中でも泣いている。

そしてぎゅっと胸を掴まれるほどの切なさを抱いている。

あたしは夢占いだとかスピリチュアルの世界を信じるほどの乙女心は持ち合わせていない。

けれど何度もこんな夢を見ると、何かしらあるような気がして、時々不安に襲われる。何かを伝えているのか、それとも…。

いやいや、そんなことはありえない。

少し弱くなってた心を振り払うようにあたしは勢いよく起き上がって、バッとカーテンを開けた。


ゆっくり目を開くと何もない天井がひたすら続いている。

私の人生と同じ。

空虚が、色のない世界が広がっている。

いつみても何一つ代わり映えのしない映像。

シミの一つも見当たらない。

だだっ広いこの部屋を、この家を皆が羨ましがる。

身につけた綺麗な服を皆が羨望する。

栄えた富を皆が妬む。

だからなんだというのだ。

これから1日がはじまるというのに気分が悪くてしょうがない。

ノロノロと私は起き上がる。

それが合図のように閉じていた襖がゆっくりと開いた。

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