日常の小噺

期間限定プリンセス

風邪をひいた。熱が下がらず咳が止まらない。咳をしているうちに喉がやられていく。


祝日の今日、友達とプラネタリウムに行く約束だったのに、キャンセル。

本を読もうと思うのに、頭が追いつかない。だったらなんでこんな文を書けているのかっていうのは置いておいて。


あーぁ、ついてないな。


「病院、行こっか」

母親が町の病院に連れて行ってくれた。


検査の結果は幸い、インフルエンザや溶連菌ではなく、普通の風邪と診断された。


診察が終わった後、薬局に行かされる。

処方された薬の量がハンパない。

総合風邪薬に咳、痰、炎症、感染など把握できないくらいの薬。


検査もした上でこんなにたくさんの薬、いくらかかってしまうんだろう。

女手ひとつで私を育ててくれる母親に申し訳なく思う。私が健康でさえいれば、こんなものは必要じゃなかったのに。


母親は文句のひとつも言わないし困った顔もしない。関節痛に苦しむ私の背中を黙って摩ってくれる。


やがて呼ばれて薬の説明を受ける。朦朧とした頭の中、できる限りで話を理解しようと努めるけれど、あまり入ってこない。


「お大事にしてください」

話は終わりで、帰って良いようだ。


薬局を出てから母親が言った。

「母子家庭だから、お薬はタダになるの」


そうだったんだ!なんとも、ありがたい。


国の制度か市町村の制度か、社会は恵まれない家庭に優しい。温かさ。温もりを感じた。



帰りにコンビニに寄った。

「何が飲みたい?ゼリーでも食べたい?」

「さくらんぼが入ったゼリー...」

「分かったよ、買ってくるね」


母親が買ってきてくれたのはそれだけじゃなかった。

フルーツゼリーとコーヒー牛乳、栄養ドリンク、アルフォート、粉薬を飲みやすいようにとアイスまで。


帰ったら、お風呂を入れて、汗かいたシーツを取り替えて、家にあったリンゴを剥いてくれた。

「プラネタリウム行くんだったのにね」

と代わりに映画をダウンロードしてくれた。


どこまでも優しいお母さん。私が看病する側だったらこんなに尽くせるだろうか。



家族に、社会に、支えられて生きてるんだなって痛感した。

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