第5話 真面目な不良女
次の日、昨日俺が言った通りに、彼女はちゃんと登校していた。それも俺より早くにだ。
「おはよう!」
「おはよう。」
明るい笑顔で、教室に入ったばかりの俺に話しかける彼女に、すでに登校していた何人かの生徒が戸惑う。
流石に昨日ほどの大事にはならないと願いたいが、ダメかもしれないな。
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「ねぇ、お昼食べよ。」
しっかりと真面目に午前中の授業を受けた汐菜は昼休みに入ってすぐに俺のところへ来た。
俺もこれは想定していたので、早く逃げるつもりだったが、どうやらスピード負けしたらしい。
「あぁ。ちょっと待ってろ。」
抵抗しても今さら無駄なことは明白なので、俺は自分の弁当を持って、彼女をつれて教室を出る。
「どこで食べる?」
「三階の空き教室。あそこの鍵持ってるから、そこで食べよう。教室だと落ち着かない。」
「なんで鍵なんて持ってるの?」
ポケットから鍵を取り出して扉を開ける俺をとても不思議そうに見てくる。
「自習室として一年の頃から使わせてもらってて、一々職員室で応対するのが面倒だからって最近もらったんだ。」
「へぇ~。じゃあ私たち専用の教室だ。」
「俺専用だ。お前は含まれてねぇよ。」
「いいじゃん別に。お腹減ったし食べよ!」
そう言って席を2つくっつけてからお弁当を広げる。小さめの二段弁当で、一段目にはふりかけごはん、二段目におかずが入っているが、どれも手作りでよくできている。
「弁当、自分で作ったのか?」
「うん、そうだよ!料理は私の係りだからみんなのお弁当も作ってるし、結構夕飯の余り物も使ってるから、そこまで大変じゃないよ。」
「そうなのか。」
彼女の施設に何人いるのかわからないが、多分家に来た小さい子たちの他にも何人かはいるだろうから、毎日すごい量を作っていることになる。
「そういう晴輝は?」
「ん?これは自作だ。家事は一通り自分でやっている。」
「──マジ?」
「マジだ。」
俺のお弁当は男子高校生の平均的な大きさだろうが、汐菜のお弁当のような色とりどりと言った感じではなく、基本は肉だ。
「その、家にお邪魔したときから気になってたんだけど、親御さんってどうしているの?」
「・・・。」
彼女が箸をおいて真面目に話してくる。確かに気になるはずだ。彼女たちが家に来たとき、親はいなかったし、しかも家族全員で生活するには小さいアパートだった。それで家事全般を俺がやっているとなれば。
「まぁ、隠しているわけではないからな。俺の母は俺が小さい頃に病気で死んだんだ。父は仕事で一年中海外だから、あの家にいるのは俺一人だよ。」
「・・・そうだったんだ。」
「別に気にすることじゃない。何年もやってるから慣れているし、生活費は毎月学費も含めて十分もらっている。」
「そっか。」
彼女は申し訳なさそうにしてしまっていた。俺は別に両親のことなんて、もうあまり気にしていないが、彼女の生い立ちからして、きっと思うところがあるのだろう。
「ねぇ、今日学校が終わったら家に来ない?」
「・・・ん?」
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これからも頑張って不定期ながら幸せな彼らの物語を書いていきたいと思っています!
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