第4話 説明

「えぇっと、私ね、実は隣駅にある教会の孤児院で小さい頃から育ててもらってて、今もそこで生活しているの。」


特に問いただした訳ではないが、やはり話さなければいけない空気になって立花が話始める。


「この子たちは、そこで一緒に暮らしてる子。シスターは私たちの育ての親よ。」


小さい二人の頭を撫でながら話す姿は、もうお母さんのようだが、なぜ彼女が不良と言われるのだろうか?


「あのときの不良は、私が一年生のときに道を踏み外してね。一時期本当に不良とつるんでたのよ。そのときの人。」


話す姿から、本当にその事を後悔しているのだと伝わってくる。


「もう二度と会わないつもりだったのだけれど、偶然見つかってしまって。だから本当に助かったわ。ありがとう。」


「家を知られてたりするのか?」


当然、家を知られていたら、あんなふうに実力で負けて恥をかいたのだから、何をされるかわからない。


「ううん。不良とつるでいたときも、隣の市で会っていたし、一度も誰にも教えてない。」


「そっか。」


一応は安心できそうだ。でも、警察沙汰にまでされたのだ。彼らがまたこのあたりで立花を探すことはあり得るだろう。


「なぁ。学校に来ないのは、何か関係があるのか?」


孤児院の生活なんてしたことがないし、どんなものかもわからないから、想像でしかないが、何となく聞いてみる。


「うーん、まぁ、関係あるかな。やっぱり生活費はかなりかかるから、アルバイトで少しでも足しにしようとしてるんだけど、そうするうちに、不良とつるでいたこともあって、学校にいずらくて。」


確かに、うちの学校では立花には近づくな、関わるな、それは全校生徒の暗黙の了解である。アルバイトも禁止ではないが、そこまでやっている生徒は多くない。


「なるほどな。」


「だから久しぶりの学校で緊張したんだよ。」


俺のために頑張った、そう言いたいような彼女は少し見上げるようにして俺を見ていた。


「明日からも学校こいよ。」

「え?」

目を丸くする。


「学校に来ない得たいの知れないやつなんか、コクられても絶対にノーだから。」

「──うん!明日からはちゃんと行くね!」


そのときの笑顔の可愛さに、ついドキッとしてしまったのは、決して惚れたからではない。と思う。

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