第30話 小話:けもののおねえさん。

 不思議な現象というのは、突如として発生するらしい。


 春泉「ミサキ、何描いてるの?」

 未咲「けもののおねえさんだよ」


 どうやら未咲はこのごろ、とあるオンラインゲームにはまっているらしく、

 そこに登場する女狐キャラをいたく気に入っているらしい。


 横の吹き出しには、「なんだかたのしくなってきた☆」と書かれている。


 玲香「それにしても、とんでもなくド直球な名前よね」

 未咲「ほんとだよね、もっとなんか作り手の発想ゆたかな名前でもいいのに」


 最初に聞いたとき、そんなわけないでしょ、と思ったりもした。

 だけど、これでよかったらしい。


 未咲「ちょいキャラかと思ったらわりと重要なポジションだったりして、

    なかなか侮れないんだよね……わたし、いっつも積極的に使ってるんだ」

 春泉「ハルミはあんまり使わない。けど、ミサキがつかってるなら……」


 ほんとよく影響されるわね、この子……。

 と。


 ぽんっ。


 女狐「はぁ~い、お呼びですか?」

 三人「?!」


 紙の中から、絵に描いたけもののおねえさんが飛び出してきた。


 女狐「うすっぺらな紙に、あたしを描き出してくれてありがとー、んーまっ」


 それだけ言って、またもとに戻った。


 未咲「な……」

 玲香「何だったの、さっきの……」

 春泉「ゆ、ユメ、じゃないよね……?」


 寒さからじゃないのに、かたかたと震えが止まらない三人だった。

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