第23話 すべてのいきもの達を受け止めるゲーム
あの春泉が、めずらしく真剣な顔をしてスマホに向き合っている。
かと思えば、今度はやさしげな瞳をそちらに向けている。
うみ「何してんだ?」
春泉「『すべてのいきもの達を受け止めるゲーム』だよ」
うみ「何だそりゃ?」
春泉「子どもからお年寄り、かわいい動物からドーモーな獣、
魚や植物、あと菌とかウイルスとか……たくさん空から落ちてくる。
それを全部すくっていくカンジ。ハマるとケッコーたのしい」
うみ「へ、へぇ……」
言われても、どんなゲームなんだかいまいちピンとこないあたしだった。
うみ「あたしそういうのにめっぽう疎くてさ。いまだにガラケーだし」
春泉「いろいろベンリだよ。妹たちのスケジュール管理もできるから」
未咲「そういえば、ふたり目の妹の名前、何になったの?」
産まれてしばらく経つはずだけど、まだ名前を知らなかった。
だから、思い切って訊いてみた。
春泉「『ひまり』。カンジはこう」
紙には「向日葵」と書かれている。
玲香「その漢字の花って確か、夏っていう季節に咲く花よね」
春泉「そう。お母さんが本から見つけてつけたんだって」
いわゆる「古典」を読んでいた、ということね。
春泉「お母さんやっぱり忙しいから、少し手伝ってはくれるけど、
ほとんどハルミがお世話してる状態。ふぁ、ちょっと疲れてきた……」
そう言って、春泉は机に突っ伏した。
起こしてやるのも気が引けたので、そっとしておいた。
先生方も、そのへんの理解はしてくれるだろう。
あたしのほうからも、いちおう伝えておくか。
うみ「ゆっくり休めよ」
春泉「うん……」
うみ「寝てないのかよ?!」
春泉「むにゃむにゃ……」
はっきりしてくれ……。
ていうかその妹、いまはどうしてんだ?
いまごろひとりぼっちで、家で泣いてたりしてやしないのかな。
ベビーシッターとかに、もしかしたら任せてんのかも。知らないけど。
♦
公園には誰もいず、静かだった。
近所にいる繋がれた飼い犬が、ちょっとうるさく吠える以外には。
猫が誰かの家の塀を危なげなく練り渡っていて、いささか上品ぶっていた。
その間を縫っていたのは、犬にも猫にも見える人間だった。
獣?「ふふっ……あははっ!」
堂々と胸を張って歩く、ひとりとも一匹ともとれるような存在。
獣の尾がついているうえに服を着ている。人間味はあまりない。
おなかをさすっていて、どことなくたのしそうな顔をしている。
獣?「そろそろだな……よっと」
股を広げてしゃがむと、何もついてないそこが露わになった。
さいわい誰も見ておらず、通報沙汰にさえならないわけだが。
獣?「ふぃー……溜まりまくって仕方がないな、こりゃ……」
下着もちゃんとつけていて、それなりに可愛かった。
すでに染みをつけてしまっている。限界はすぐそこらしい。
ぼやんとした目で、下を見つめている。
呼吸するにしたがって、おなかが大きく動いているのがわかる。
獣?「早く出てくれよ……その瞬間が待ち遠しいんだよ……」
かなり我慢していたらしい。顔にも出てきてる気がする。
ぽたぽたと垂れてきている。全部出るのも時間の問題だ。
獣?「ふぅ、ぅっ……!」
歯を食いしばりながらおなかに力を入れ、みずから決壊させた。
大きな音をさせて、たまらなく気持ちよさそうな顔をしている。
下着はすでにびしょ濡れで、すぐにでも替えが必要そうだった。
獣?「あぁ~、すっきりした。またいっぱい水分とらないとなぁ……」
うつろな目をしながらそうつぶやいて去っていく獣、否、人らしき者。
その正体を知るものは、ついにいなかった。
のこった水たまりは、あっという間に蒸発して跡形もなくなっていた。
獣?「さーて、次はどこでしよっかな~……」
♦
しかし、その近くを歩む獣たちにとっては、かなりの劇薬だった。
その周囲の空気を嗅ぐと、たちまち彼らは発情してしまうのだった。
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