第18話 万引き幼女

 この街に来て、ひさしぶりに駄菓子屋さんに行ってみたくなった。


 瑞穂「わぁーっ、なつかしー!」


 むかし食べていた駄菓子がまだ売っていたりして、また食べたくなった。


 瑞穂「うーん……でもいまセーブしてるところだしなぁ……」


 そんなことを考えていると、店内をきょろきょろしてる女の子が見えた。


 瑞穂「(お菓子をさがしているのかな)」


 そう思っていたけど、次の瞬間、お菓子をひとつ手に取り、隠し持った。

 そのままお店を出ようとするので、とりあえず声をかけてみることに。


 瑞穂「ねぇ、ちょっといい?」

 幼女「(びくっ)」


 女の子の動きが止まった。どうも確信犯っぽい。

 振り返ったころには、すでに涙目になっていて怒られるのを覚悟していた。


 幼女「ごめんなさい……このおかし、どうしてもいまたべたくなって……」

 瑞穂「それならちゃんとお金払わないと、お店の人が悲しむよ?」

 幼女「うん、でもおかねはちゃんともってるよ」

 瑞穂「じゃぁ、なんで払わなかったの?」

 幼女「はらいたくなかった……おかね、あんまりもってないし……」


 お金はあったけど、払いたくなかった……。

 わたしはその意味をいまいちはかりかねたけど、聞き返すには空気があまりに重く

 次になんて言葉をかけていいのかわからず、とりあえずもとに戻すように言った。


 いろいろと複雑な事情があるんだと思う。だけど、やっちゃいけないことはある。

 そういったことも伝えたかった。だけど、やっぱり空気が冷え切っていた。


 顔を上げることなく、その女の子は店を出ていった。


 瑞穂「どうしたらよかったんだろう……」


 考える間もなく、駄菓子を買う気にすらなれず、気づけばわたしも店を出てた。


 瑞穂「あの子のご両親の顔が見てみたいな……」


 これは決して完全にそのご両親が悪い、というわけでもないとは思っている。

 それでもやっぱり、原因のひとつはここにあると思わずにはいられなかった。


 瑞穂「……いいや、もう家に帰ろう」


 あまり深くは考えずに、わたしはいつもの道を歩いていくことにした。

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