第17話 世界を終わらせる枇杷の木のお話

 その昔、一本の枇杷の木が植わってあった。

 近づいてみると、なにやら禍々しい雰囲気をまとっている。


 男性「近づくな! こいつはな、病気を蔓延させる枇杷の木だ!」


 そう言い伝えられて、数百年が経とうとしていたころだった。

 実際のところは迷信の類だったそうだけど、当時は本気で信じられていた。


 女子「えー、そんなことないっしょ。こんなにきれいなのにさぁ」


 ちなみに、当時こんなしゃべりかただったどうかは定かではない。

 その女子が枇杷の木に触れると、突然おびただしいほどの粒子が舞った。


 男性「だから言っただろ! それ以上触るな、世界が滅びるぞ!」

 女子「えーいいじゃん、ちょっとくらい。こわがりすぎだって~」

 男性「ちょっ、おまっ、やめ……jhkgりjげこflkwdg」


 声にならない叫びをあげ、その男性はばたんと倒れてしまった。

 対する女子のほうはというと、なぜかぴんぴんとしている。


 女子「おーい、大丈夫かー。息してるー?」

 男性「意味わかんねーし……なんでお前はそんなに元気なん……がくっ」


 ことばの途中で、その男性は無残にも息絶えてしまったようだ。


 女子「ふーむ……心身ともにひょろっちいのがいけないんじゃないかな」


 この世界はシビアだ。

 冬にしか咲かない花と戯れられないと、こうなってしまうのだから。


 ♦


 未咲「みたいなお話をね、こないだ図書館で読んだ気がするんだ」

 玲香「実際にあってもおかしくはないわね」

 うみ「この世界に男が少ない理由とか、その本読んだらわかるかもな」

 未咲「うーん、それは自然とそうなったんじゃないかなぁ」

 うみ「なんでそう思うんだよ」

 未咲「なんとなく。とにかくこの世界はそうなってるんだよ、きっと」

 うみ「根拠もなしに、よくそんなことがいえたもんだ」


 寒暖……ではなく、たのしい歓談の時間はあっという間に過ぎていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る