第10話 痴女の正体

 瑞穂「だ、誰が痴女ですか!」


 この一言で、その一日ははじまった。


 うみ「残念だけどこっちは証拠とらえてんだよ、あきらめて認めろ」

 瑞穂「だって玲香さんが……!」

 ロコ「どーしたの? 朝からにぎやかだね、おふたりさん」

 うみ「こいつが犯人だったんだよ、玲香を襲った」

 瑞穂「だからちがうって言ってるのに!」

 うみ「これを見ても、果たして同じことが言えるかな?」

 瑞穂「うっ……もうっ、わかりました! そうです、わたしがやりました!

    そんなことより早くそこどいてよっ、もう間に合わな……ひゃぁぁっ」


 いきおいよく走っていったはよかったが、たちまち嬌声が廊下に響き渡った。


 うみ「罰あたりなやつ……」

 瑞穂「玲香さんにもっと触れてたかった……身体がすけべっちなんだもん……」

 うみ「すけべっち、ってなぁ……」


 こいつが今後こんなことしないためにも、これからも電車通学すっかな。

 ロコにはすこしさみしい思いをさせてしまいそうだけど。


 未咲「はぁぁ、すっきりした……あれっ、どうしたの瑞穂ちゃん?」

 瑞穂「その、いろいろと推して察していただけると助かります……」


 ♦


 未咲「そっかー、やっぱり瑞穂ちゃんも玲香ちゃんのナイスバディを前にして

    思いがとまらなくなっちゃったんだね……その気持ちはとてもわかるよ」

 瑞穂「そ、そうです、よね……(もじもじ)」

 未咲「わたしもこれまで何回も、玲香ちゃんのその魅力に気づいては

    自分のありったけの気持ちをそのままぶつけてきたもん、すごくわかる」

 瑞穂「未咲ちゃん、ちょっと……(ぎゅむ)」

 未咲「そうだ、今度はちゃんと玲香ちゃんの同意を得てしない?

    そのほうがきっと愉しいし、悦びも何倍にもなっていいことづくめだよ」

 瑞穂「うぅっ……もう、だめ……(ぐすっ)」

 未咲「……瑞穂ちゃん?」

 瑞穂「未咲ちゃん、のんでっ!」

 未咲「むぐっ?!」


 わたしの口もとに、とつぜん瑞穂ちゃんの大事なところが押し付けられた。


 瑞穂「出るっ、おしっこ出るうぅぅっ」

 未咲「むぐぐっ?!」


 瑞穂ちゃんの水門が開いたっぽく、わたしの口にあったかいものが入ってきた。


 瑞穂「おねがいのんで……じゃないと、床にいっぱいこぼれちゃう……」

 未咲「んむむ(わかった)」


 喉を通っていくその液体はとても苦く、さながらおとなの飲み物のようだった。


 瑞穂「わたしのおしっこ、なんかビールみたいってお父さんに言われるの……」

 未咲「(そうなんだ)」


 言われてみればそんな味がしなくもない。わたしのおしっことまるで正反対だ。

 お父さんはお酒の味を知っているから、きっとそんな感想も出てくるんだね。


 未咲「(というか、お父さんと瑞穂ちゃん、一体どんな関係なんだろう……)」


 想像すると興奮してきて、わたしもたまらず二、三回ほどこぼした。

 たちまち甘い香りが教室にたちこめて、瑞穂ちゃんの苦みとまざりあった。


 瑞穂「(未咲ちゃんもおもらししてる……やっぱりいいにおいがするよ……)」


 ♦


 わたしの記憶は、ここまでだった。

 気づいたときにはなぜか家に帰っていて、出来事を振り返ってひとり赤面した。


 瑞穂「(きょうもお父さんのためにためとかないと……はぁ、たいへん……)」


 さもないと、何をされたかわかったものじゃないから。

 苦虫を噛み潰したような顔になりながらも、わたしは麦ジュースを飲みほした。


 瑞穂「(うぅっ、もれちゃうもれちゃう……!)」


 トイレに駆け込むも、また間に合わずそこにこぼしてはただ泣くわたしだった。

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