第4話 アイドルの子はしちゃうんです

 おもらし、それはとっても恥ずかしいこと。

 なのにわたしたちは、いつから慣れてしまったんだろう。


 いまもおしっこは、冬の世界にこたえるようにおなかにたまり続けている。

 それは女の子にとって、時に大きなはじらいをもたらす悲劇の水にもなりうる。


 そして、そのときが来るのは誰よりも早い。


 瑞穂「どうしようっ……また、がまんできなくなって……っ!」


 そう判断し即座にしゃがんで下着をおろそうとしても、それが出るほうが早く、

 それをしっとりぬらし始めると、あきらめがついたように手がとまってしまう。


 瑞穂「またやっちゃった……」


 全部出し切って、すすり泣くわたし。

 むれむれになるわたしの大事なところに、降り積もったつめたい雪が付着する。


 瑞穂「ちべたっ」


 そのつめたさに追いやられて、またやってしまう。負の連鎖だった。

 からだの奥にたまっているものぜんぶ、根こそぎ出ていくみたいに感じた。


 瑞穂「きもちいい、けど……なんかちがうよぉ……」


 慣れた、とは言っても、やっぱりこのへんがどうしても乗り越えられない。

 できることならずっとおなかにためておいて、出ないようにしたい。

 そうしたらこんな思いをしなくて済むし、毎日元気に過ごせる。


 瑞穂「あれ、試してみようかな……」


 ♦


 わたしは思い立って、ネット通販で尿道に栓をする道具を買った。


 瑞穂「よしっ、これさえあれば……」


 恥ずかしいな……と思いながらも、わたしは下着をずらし、それを装着した。


 瑞穂「んんっ」


 しかし耐えきれず、道具はあっけなく外れた。

 それどころか、広がってしまっただけに余計に我慢が効かなくなり……。


 瑞穂「やっ、でちゃだめっ……!」


 ぴぴっと漏れ出し、せっかくの新しい下着まで汚す始末。使った意味ない……。


 瑞穂「いいアイデアだと思ったのにな……」


 元気も出したいし、かといって出しちゃだめなものもあるし、

 おむつなんてもってのほかだし……あぁもう、どうしたらいいんだろう。


 瑞穂「こうなったら、もう逆転の発想で……」


 誰かにわたしの最高に恥ずかしいところを見てもらって、乗り越えよう。

 それしかないんじゃないかって、このときのわたしは考えられなかった。


 かりにもアイドルの子だっていうのに。お母さんには言えないかな……。


 ♦


 瑞穂「えーと……みんな、集まってくれてありがとう……ございます……」


 やる、と決めたからにはやるしかない。

 わたしは覚悟を決め、大きく息を吸った。


 瑞穂「すぅーっ、はぁーっ……」


 すでに気づかれているかもしれない。

 下半身をよくみると、ずっと震えていて落ち着きがないから。

 これを単に、冬の寒さのせい、って片付けることはできなくもない。

 もっとよく見てくれないと、ほんとうのところはわからないのかもしれない。


 だけどわたしの中には確実に、たまり続けているものがあった。


 瑞穂「(うぅ……だんだんしたくなってきた……

     だけどやっぱり恥ずかしいから、もうちょっとだけがまん……)」


 自分でもどれくらいもつかわからないのに、無謀だと思った。

 現にいま、がまんしすぎて少しずつ先っぽがふくらみはじめてるし。


 瑞穂「(なんか、ひとりでこーふんしちゃってるみたいで、ばかみたい)」


 ついに腰のほうにまで出てきて、とうとう隠せない段階になってきた。


 未咲「ねぇ瑞穂ちゃん、わたしたちをこんなところに集めて何かやりたいの?」

 瑞穂「それはね……これからわかるから、とにかくわたしのほうだけ見ててっ」


 他のみんなはただ座って、おとなしくわたしのほうをずっと見ていた。

 下着がちらちら見えていたりもしたけれど、そんなこと気にしていられなかった。

 まさか自分も見られていたなんて、どうしたって気づけなかったわけだけど。


 瑞穂「(もうちょっとがまんしてたいけど、そろそろげんかいかも……)」


 公開おもらしだなんて、ふつうの人だったらきっとやらないと思う。

 みんなふつうっぽいし、そしたらなおさらわたしが浮いてしまう。

 思わず引き返したくなった。だけど、もうトイレまで間に合わなさそう。


 秒読みがはじまっているみたいだった。じんわりと体が熱くなっていく。


 瑞穂「(おねがい、まだ出ないで……)」


 出口をそっときゅっと締めて、出すまいとする。

 だけどそれが逆に、おもらし寸前の股を刺激していることには気づけなかった。


 瑞穂「んっ……!」


 ちょびっとだけ染みた、ような気がした。いよいよ息があがってくる。

 その瞬間を、みんなに見られようとしてるっ……!


 瑞穂「やぁ……」


 しょろっ。この音はもう、確実にしている。それだけはわかってしまう。

 あとは最後まで、わたしのはしたないところを見届けてもらうことにしよう。


 瑞穂「はぁっ、はぁっ……ごめんなさいっ、わたし、こういう子なんです~!」


 誤解を招く言い方だ。それに気づいたのは、もう少しあとになってからだった。


 瑞穂「見てっ……いっそのこと、ぜんぶ見てぇっ!」


 白く覆われたわたしの大事なところから、金色に光る液体が噴き出してきた。


 瑞穂「これがっ……これがわたし、なのっ……だから、もっと……」


 後で思い返せば、自分はなんてこと口走ってたんだろう。

 女の子がこんなことになっちゃってるときに発する科白せりふだとは、到底思えない。


 瑞穂「まだ出るっ……まだ出ちゃうよぉっ……」


 さながら荘厳な滝のようだった。

 とめどなくあふれ出してくるその水は、ほかの誰のそれよりも輝いていた。


 最後は搾り取るように出して、その一滴はとてもはかなげに落ちていった。


 未咲「すごい……すごいよ瑞穂ちゃん……」


 なぜか未咲ちゃんだけが絶賛していた。ことばにもならないみたいだった。

 玲香ちゃんは引き気味。春泉ちゃんも目がらんらんとしているような……。

 うみちゃんはほぼほぼ無反応。もしかして、嫌われちゃったかも……?

 ロコちゃんはつられちゃったのか、わたしほどではないけどしちゃっていた。


 ロコ「み、みんなみないで……」


 震えた声でそう言って、半ば泣きそうな顔になってた。

 これというのも、ぜんぶわがままなわたしのせい。わけを話さなきゃ。


 瑞穂「みんなにおもらししてるところを見せれば、気持ちが楽になると思って」

 玲香「そういうものなのかしら……」

 春泉「ハルミそのキモチ、ちょっとわかるかも……」

 うみ「わかっちゃうのかー……」

 未咲「だよねだよねっ! なんていうか、もうこれからこんなちっちゃいこと

    気にしなくていいんだって気になれるよね! いいよ、瑞穂ちゃん!」

 瑞穂「そう感じてもらえてよかった……おもらししたかいがあったよ……」


 そう言って、またもや瑞穂ちゃんはこないだぶりに気絶した。


 ♦


 そのあと学校の女子トイレで、奇っ怪な声が響き渡ったことはいうまでもない。

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