第2話 出ない?!

 未咲「(☎)玲香ちゃん、ちょっと来て!」

 玲香「なにも教室から電話かけて呼んでこなくたっていいでしょうに」

 未咲「(☎)喫緊の課題なの! はやく!」

 玲香「はいはい、行けばいいんでしょ」


 なにかやばいことが起きていることは、なんとなく察することができた。

 着いたところは、案の定トイレ。


 未咲「おしっこが出ないの! もう三日も!」

 玲香「えっ、そんなに?!」


 不覚にも驚いてしまった。

 未咲は泣きそうな顔になっていて、相当切羽詰まっている感じだった。


 未咲「お墓参りのときは、問題なく出せてたのに……」

 玲香「きっと、罰かなんかがあたったのね」


 排尿障害を起こしている未咲の顔は、すでに真っ青だった。

 むしろここまでよく耐えたほうだ。普通なら死んでいてもおかしくはない。


 玲香「すぐ出させてあげるから、安心しなさい」

 未咲「まかせるよ、玲香ちゃん」


 苦しみでしかないその尿意は、もはや拷問に等しかった。

 したい気持ちはあっても、体がそれを許していない。とても不調和だ。

 と、玲香ちゃんがあるものを取りに行った。


 未咲「……?」


 見ると、人が変わったかのような玲香ちゃんがそこにいた。


 玲香「おとなしくしてなさい、このぶたさん」

 未咲「(あー、なんか、そっちなんだ……)」


 やりたいことはわかる。だけど、どこかなりきれていない感がある。

 お嬢さんと呼ぶにはふさわしいかもしれないけど、嬢ではない。

 というか、なんでそんなものもってるの……ううん、詮索はやめておこう。


 わたしはパンツをはいていて、そこあたりをめがけて玲香ちゃんは鞭をふるう。

 あってる、のかな……?


 玲香「これで出る、はず……」

 未咲「玲香ちゃん、真剣に考えてる?」


 玲香ちゃんの目が、どことなくふざけているように見えてしまった。


 未咲の膀胱は痛々しいほどに膨れ上がっていて、かわいそうだった。

 そんなときに現れたのは、うみの親友、ロコだった。


 ロコ「未咲ちゃん、大丈夫?」

 未咲「ロコちゃん……うん、そう訊かれたら大丈夫っていうしかないよね」


 そう、ほんとうは大丈夫なわけがない。

 これはそう、ぜんぶこの季節のせい。わたしはきっと悪くない。


 ロコ「何もしてあげられないけど……がんばってね」

 未咲「うん、ありがとう……」


 いちおうお礼は言う。出るかどうかはおいといて。

 ロコちゃんが去ったところで、試行錯誤を再開。そしてたどり着いた。


 未咲「パンツを濡らす」

 玲香「まさかこれだけで効果が出るとは思わなかったわよ」

 未咲「それだけわたしが単純ってことかな?」

 玲香「いいんじゃない、これからこうすればいいっていうのもわかったし」

 未咲「ありがとう、玲香ちゃん♡」

 玲香「はいはい……」


 いつもの流し方の中にも、ちょっとした安堵が見えた。


 よかったんだけど、なんだかきゅうにばからしくなってきた。教室に戻ろう。

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