第一章 長身女戦士ヴィクトリア
第1話 アタシの仲間になれ!
皆さん。
あらためまして、こんにちは。
僕、アルフレッド・シュヴァルトシュタインです。
今回もいつもみたいにちゃんと自己紹介したいところなんだけど、き、緊急事態のため
ここは王城からほど近くの街道の脇にある林の中。
いきなりで恐縮なんですが、いま僕はここである人に身柄を拘束されて
「おとなしくしろ! 殺すぞ!」
ひぃぃぃぃぃっ!
鋭いナイフの切っ先を鼻先に突き付けられて僕は必死に悲鳴を飲み込む。
そんな僕に刃物を突き付けているのは一人の女の子だった。
僕よりも頭ひとつ分は背の高い長身が特徴的な女戦士。
赤毛にオレンジ色の瞳、そして
僕の記憶が正しければ、前に何度か僕の住む
あ、もう説明する必要もないと思うけど、ミランダってのは
僕はその
ミランダには家来だと思われてるけどね。
そしてつい先ほどミランダはあるプレイヤーに敗北した。
だから僕はそのプレイヤーを王様の元へ連れていくために
それも僕の任務のひとつだからね。
で、無事に役目を果たしてプレイヤーを王様の元に送り届け、僕はひとり王城から
そこで道行く僕はいきなり草むらから飛び出してきたこの長身の女戦士に捕まって、草むらの中に引っ張り込まれてしまったんだ。
彼女はものすごい力で僕を地面に押さえ付けると、あっという間に僕の体を
僕はまったく抵抗できないまま林の奥まで連れ込まれ、そして今こうしているように刃を突きつけられているってわけ。
「あの……女戦士さん。なぜ僕を
震えながらそう声を絞り出す僕に、女戦士は
「うるせえ! おまえはこのままアタシの仲間になるんだよ! あとアタシの名前はヴィクトリアだ! 覚えておけっ!」
「うひいっ! き、切っ先をこっちに向けないで」
ナイフの鋭い剣先が今にも僕の鼻の穴に突っ込まれそうで怖いから!
仲間になれ、だって?
いやいや、仲間になるイベントってもっとこう
「もしや君はロー○シアの王子では? いやー探しましたよ。さあ力を合わせ共に闘いましょう」みたいな。
こんな
そんな力技では信頼関係は築けませんよ。
「あ、あの。ヴィクトリアさん? 意気込んでるところ申し訳ないんだけど、僕を仲間にしても何もメリットないですよ。ただの下級兵士ですし」
「ウソこけ! おまえが反則級のチート野郎だってことはお見通しなんだよ!」
ゲッ!
な、なぜそれを……。
確かに僕は前回、砂漠都市を中心に繰り広げられた大騒動の中で、いくつもの偶然が重なった結果、信じられないような急成長を遂げた。
チート野郎とか言われても仕方ない。
そんな僕を
「アタシはこれから絶対に負けられない大事な戦いがあるんだ。おまえにはアタシの仲間としてその戦いに参加してもらう」
「そ、そんな国を代表するみたいな重要な戦いに、僕みたいな
「てめえ。あくまでもシラを切り通すつもりか。
そう言うとヴィクトリアは僕の鼻にナイフの刀身をピタリと当てた。
刃の冷たさに僕は心底ビビッて声を失う。
「いいか。一度しか言わねえからよく聞けよ。おまえがどうしても仲間にならねえって言うなら、こいつで生きたまま全身の皮をはいでやる。死んだ方がマシってくらいの激痛地獄を味あわせてやるからな」
いやだぁぁぁぁ!
そんな残酷ショーはこのゲームでは見せられません!
「だが、おまえがアタシに協力して仲間になるって言うなら……そ、その時は」
そう言うとヴィクトリアは
ほえっ、な、何を……。
ヴィクトリアの小麦色の健康的な肌を前に僕は思わず息を飲む。
「お、おまえの好きなように触ってもいいぞ。天国みたいな気分にさせてやる」
ブフーッ!
何だその極端な条件は。
「だが仲間にならないなら皮はぎ&撲殺だ!」
天国から地獄の振り幅すごすぎ!
「い、いやちょっと。だいたい何でそうなるの?」
「と、とぼけてんじゃねえ! おまえが相当な女好きのスケコマシ野郎だってことは有名な話だ!」
「そんなの聞いたことないよ!」
嘘でしょ?
そ、そんな
「どうせ交換条件としてアタシの体を求めるつもりなんだろ?」
「そんなわけないでしょ! そもそも僕、この通り地味ですし、女の子にモテる要素ゼロだよ」
「いいや。アタシはそんな見てくれなんぞに
た、確かに3人とも何だかんだで僕を助けてくれるけれど、それはモテてるとかいうのとは明らかに違うと思う。
「いや、それは彼女たちの気まぐれというか、優しさというか……」
「うーそーだーねー! あの手この手であいつらを手ごめにしてるんだろ? 愛人にしてるんだろ? そんなナリして、よ、夜とかすごいんじゃないのかおまえ。どうなんだ!」
「よ、夜とかって……何もすごくないよ!」
もう何なのこの人!
自分自身も顔を真っ赤にしてるくせに恥ずかしいワードを連発して。
「あの3人を手なずけてるってことはアルフレッドって奴はボンクラのふりをして相当な
「て、手なずけてるなんてとんでもない」
むしろ僕のほうが犬扱いされてるんだけど。
「とにかく! おまえが女好きだってことはその顔を見れば分かる!」
「どんな顔だ!」
もういい加減にしてよ。
僕がほとほと困り果てていると、ヴィクトリアは声のトーンを下げて
その目に浮かぶ色がほんのわずかに変化したように僕には見えた。
「だから……もし協力してくれるんなら、アタシもおまえが望むものをくれてやるって言ってんだ」
「ヴィクトリア……」
「ア、アタシは、あいつらに比べたらガタイもデカくて色気もねえけど、む、胸だけは勝ってるぞ。おまえもそう思うだろ?」
「た、確かに」
何が「確かに」だ!
何ガン見してんだ僕は!
ミランダたちに聞かれたら殺されるところだぞ。
でも僕はヴィクトリアを見ていて少し気になったんだ。
え?
いや、大きな胸のことじゃないからね!
そうじゃなくて……。
「ヴィクトリア……君、もしかして何か悲しいことがあったの?」
そう。
彼女の目に浮かぶその色を僕は知っている。
何か悲しいことがあった人は、こんな目をしているんだ。
僕はそんな目を今まで何度か見たことがあるから。
だから僕はヴィクトリアの話を聞いてあげたくなったんだ。
それが自分の悪い
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