#030:奇妙だな!(あるいは、頂上たるは/淡きセクレト)
唐突だが、説教を喰らっている。
「『ケレン味』推しでいく言うとったやろがぁッ!? 何でワケわからんベクトルにばはっちゃけとうとぉッ!? あかんさけ? そんなんしたらあかんさけがじゃぉぅッ!?」
まあその怒られ元は、お察しが如く
ま、まあまあ、敵さんを退けたっていう、そして予想外の「ワープ」をかませられたっていう、確かな成果を残せたんだから、いいじゃあねえですかい……? と、おもねりつつ、何かは分からねえが白く濁った酒を、対面の真っ赤っかになってる妙齢の女に注いだりする俺なのだが。つうか今日は人間の姿なのか……
件の三人娘を屠り切って戦利品を得てのち、件の「
ここまでご都合主義も昨今お目にかかれんよな……と改めて思い返してみたりしている俺だが、昼夜を賭した
鬱蒼としたと表現するに相応しい鬱蒼さを有していた森のほどなかにあった「
しかして、
陽が落ちてからは唐突に「人間」の姿へと変貌をしていたネコルであり、そのこともまあなんでかな、とか思っていたのだが、なんか強めの酒を立て続けに二杯ほど空けたとこからおかしくなってきていたわけで。
ケレン味を……ッ!! ケレン味言うたでしょう……ッ!? と、定まっていない目線で頭をぐわぐわ揺らしながら迫られると、そして俺が酔いに出遅れているという状況を鑑みると、もうどうすればいいのか、このまま酔っぱらいをいなしていく他はないのか、みたいな状況に陥っているのは、いささか疑いを持たないところなのである……
とか言いつつ、俺も、
「
目の前に座る
今日だけで、四人もぉッ!! その毒牙にかけておるのですよ自覚はあるのですか無いならそれはそれで問題なのですからね肝に銘じておいてくださいよぉ……と、つらつらと感情がこもってんだかないんだか分からないような低い小声を顔面に叩きつけられているような時間が続いている……
完全に乗り遅れた、その感はある。これもうどう足掻いても、追いつけることはないな的な諦観。そしてなるべくならこの場を早く切り抜けたい的、切なる思いに全身が浸っている感……
ここまでのカラみ酒とは思わんかった……猫の姿のままだった昨夜(まだ昨夜だったんか!!)は割と自分のペースを守って淡々と飲みそしてほどよく酔っていたかに思えたのだが、
ま、ま、もうそれほど急ぐ旅でも無くなったわけですし、今後の「戦い方」につきましてはね、素面の時に存分に行いませんかねい……? と、多分におもねり気味の言葉を発してしまった。それがいけなかった……
「ぶわかやろうッ!! そんなこったから、『ケレン味』からかけ離れた無茶苦茶をやってしまうんどどッ!? さっくり原点に戻れ言うてるどどッ!?」
火に油、どころか常温で気化する類の燃料を注いだ感は否まれず、それ以前にああ言えばこう言うの負のスパイラルに叩き込まれておる……どうすりゃいいねんこれェ……て言うか「どど」が語尾につくことってあまり無いよね……
だが、どなり散らしてからは急にダウナーな波がやって来たのか、こくりこくりと首をあっちこっちに傾けるようにして舟を漕ぎ始めた。まあこいつも今朝から頑張って立ち回ってくれたしな……言うてたほど「神」である全能感は「全能」じゃあなく、割と必死こいてこいつがその場その場で「頑張って」やってくれてることが分かってきた今、何と言うか、
俺は空いた皿を片付けに来た赤髪の店員や、周りの席で怒るというよりは唖然としている他の客たちに手刀を切って謝罪しつつ、ねえさんもうそろそろ引き揚げましょうぜ……と、思い切りこちら側に体重をかけてくるものの、ちゃんと立たせようと押し返そうとすると膝から腰から崩れ落ちそうになるという、何とも運搬しづらい物体と化した
舗装こそ為されてはいないが、丁寧に均され突き固められた平坦な道を、行きかう派手な彩色の住人やら、荷車を引いた「
しかして、一歩ごとにぐにゃり感の増してくるネコルのがばり全開の左脇からは、甘酸っぱいようなグリーンっぽいような強力な
またしてものあかん予感に、それでも「鋼の自制心」という、「ケレン味」よりも技レベルが上がっていそうな己のスキルを信じて宿へと向かうのであった……
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