第107話 進捗
禁書棚の物色をはじめて、しばらくの後、さしたる量のない蔵書の中から、俺は興味深い本を見つけていた。
「『魔術言語から見た悪魔』、どれどれ」
緑色のさらさらしたハードカバー。
あまり古くはなさそうだ。
それほど分厚くはない、本の装飾もそこまで派手ではなく、装丁は丁寧である。
立ち読みで、本のを開き、目次に目を通した後……ペラペラと、目的をもって俺はページをめくった。
「156ページ……156、いち、ごう、ろく……あった、悪魔の召喚魔法陣、基本型」
恐ろしい項目の名前に、めまいが起きそうになる。
悪魔と契約するだけでも、ひとはその身を焼かれ、相対的に種としての寿命が縮むと言われているのに、それを召喚しようと試みる者がいるのか。
ページをめくり、次々と現れる、ページを一枚を豪華につかって描かれた多様な魔法陣を眺めていく。
この魔法陣の作者が、本の著者かはわからないが、とにか描かれている魔法陣は素晴らしいの一言に尽きる。
縦横15センチの円形のスペースを、一文の隙もなく完全に使いこなし、多様な表現技法で、魔術言語をその式のなかに組み込んでいる。
それを全部で16パターン、それぞれが汎用召喚魔法のパーツとして使えるものでいて、16個すべてを使うことで特殊な召喚、ここでいうなら悪魔の召喚魔法陣として機能するようデザインされているようだ。
ページをめくるごとに、その恐ろしい才能に身が打ち震えるようだった。
背表紙を見る。
「パトゥル・オリナ……と、ん」
著者の欄には2人分の人名が記載されているが、片方は鋭利な刃物で引っ掻いたようになって、読めなくなっていた。
どうやら共同執筆した本らしい。
それにしても、聞いたことない名前だ。
暗黒魔術に手を染めてるのだから、世に出てこられないのは必然かもしれいが、それでも名前くらいは知ってると思った。
宮廷魔術師時代は、こういった闇の世界の住人をよく相手にしてきたからな。
悪魔の召喚法に関する重大な情報が載った本を、読書机においておく。
続いて、本棚を散策していると再び興味深いものを見つけた。
「『
悪魔たちにも種類があることは、エンディングのもとの資料閲覧により知識として知っている。
ただ、この『
背表紙を見る。
おや、著者はまたしても名も無き天才パトゥル・オリナだ。
彼は悪魔にご執心らしい。
目次に目を通す。
「……ッ」
めくる3ページ目で、手をとめて、俺は自分が見間違いをしていないか、疑ってしまった。
それほどに、待ち焦がれた瞬間だった。
「死の悪魔について……」
師匠、やっと見つけました。
これでようやく師匠に追いつけました。
あなたから託された仕事を、やり遂げられるかも知れません。
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