第57話 強襲
黒ローブをはためかせ、
おや、前に生意気なショタと、それを囲むジジイどもが見えてきた。
中杖を掲げながらはしり、数十メートル先の廊下をあるく一団の背中をねらう。
「≪
より高威力を出しやすい中杖の誘導によって、体内の魔力が活性化、風の属性へとかわっていく。
空気を叩き引き伸ばしたような、ほとぼしる圧力の高音のうねりと共に、風魔力のかたまりが飛んでいく。
ーーブゥゥゥゥウンッ
「陛下、それではそろそろ宮廷魔術師のポジションを……ぼぶへぇあッ!」
「よし」
命中。
ローブに身を包んだ老人たちのひとりが愉快に縦回転しつつ、吹き飛び、よく掃除の行き届いた廊下をスーッと滑っていく。
「ッ、何者だ!」
「陛下! お下がりくださいっ!」
長老たちは揃って振りかえり、廊下のど真ん中にいる俺に気がついた。
「何者? 嫌だな、長老の皆さま方。俺のこと忘れちゃったんですか?」
脱力して肩をすくめ、深くかぶった黒ローブをめくって、彼らの大好きな俺の顔をみせてあげる。
長老たちは皆、目を見開いて口を開け、驚きを隠せないでいるようだ。
「ご、ゴルゴンドーラッ!? 貴様がなぜここにいる! どうやって魔法省に……っ、というか帝国に来たのだ!」
「……はぁ。見くびられたもんだな」
失望、俺のいだいた感情はただそれだけ。
仮にも宮廷魔術師だったんだ。
俺がどんなことを出来て、どんなことが出来ないのか把握していると思っていたが……見当もつかない、そんな不定の怪異にあったような顔するなんて、本当にこの老人たちは、俺のことを知らない。
いや、知ろうとしてこなかったのか。
無自覚の包囲網の抜け道をつくってしまったのは、本人たちはいらぬプライドと、根拠のない自信のせい……こんなのが国の意思決定にたずさわるトップに座しているのだから、祖国が不憫でならない。
「俺の解雇が反発をかうとわかっているのなら、そんなことするべきじゃなかった。
それに、どうして前任大臣が俺のことを宮廷魔術師にしたのか、戦争にそれほど反対したのか、その訳を知ろうとするべきだったんだ……けど、もうおそい」
「おごるな、ゴルゴンドーラぁあ!」
通路の縦横を埋めつくすくらい大きな炎の放射。
向かってくる攻撃性魔力へ水属性式魔術三式≪
属性のことなる魔力、さらには「現象」レベルでも正反対のそれらは互いに打ち消しあい威力を弱めていき……、最後には大水の砲は火炎を完全にかき消して廊下に激流をつくってながれていく。
「ぐわぁぁああ!」
「へいかぁぁあああ!」
水圧にたまらず吹き飛ばされ、まとめて水に押し流される長老たちの叫び声が、瞬く間に内側から水没した魔法省に響きわたった。
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