第43話 俺のやり方
「えー、サリィったら出かけちゃうのー?」
「すまません、レティスお嬢様。でもレティスお嬢様との平穏を守るために、俺は行かなくちゃいけないんです」
頬を膨らませ、いっしょの読者タイムを取れない俺に抗議の視線をむけねくるレティス。
可愛すぎてずっと一緒にいたくなるが、国を守るために俺はいかなくちゃいけない。
「ディナーまでには帰るのよ! これはレティスとサリィの約束だわー!」
「はい、必ず戻ります。行ってきますね」
レティスの頭をスッと撫でて、俺はいくつかの魔導書と中杖を手にパールトン邸をでた。
⌛︎⌛︎⌛︎
ーーカチッ
時刻は15時24分。
具体的な時間指定はされなかったが、出来るだけはやく王城へおもむいた俺は、また正門より離れた簡素な扉から城の裏庭へとはいった。
「こんにちは。サラモンド・ゴルゴンドーラです。俺の席はここでいいんでしょうか?」
「ええ、そこで大丈夫ですよ。適当に座っていいらしいです」
兵舎の横に建てられた小屋の中にはいり、昨日のワイルドな中年ーー騎士団長アルガスと、
白ひげの老人ーー魔術師団の長ノーマン・エラスムスに伝えられた通りに、おなじ臨時の魔術教官として抜擢された、上位の魔術師たちに挨拶をしていく。
俺へ返事をしてくれた同い年くらいの魔術師のとなりの席にすわり、握手の手をさしだす。
「改めてサラモンド・ゴルゴンドーラです。これからしばらくの付き合いになると思います、よろしくお願いします」
「丁寧にどうも。私はパティオです、冒険者ギルドの近くの通りで魔法を教えるため塾を開いています。よろしくお願いしますね、ゴルゴンドーラさん」
かたい握手をかわし、パティオはやわらかく微笑みかけてきた。
話には聞いていたが、どうやらほんとうに魔術師の塾なるものがあるらしい。
学校に通えない環境の者でも、魔術を学ぶ機会を提供するという、この国に俺がきて猛プッシュしてる素晴らしきシステムのひとつだ。
レトレシア魔術大学の卒業生のうち優秀な者は、魔術の普及のために王都で塾を開くことを、
国から許可されるというから、パティオもきっとそのうちのひとりなのだろう。
やはり魔術教官に選ばれるには、それなりに実績がないといけないらしいな。
「おい、そこの若造ども」
嫌悪感をあらわす声。
ふりかえり、後ろに立っている顔に傷のある渋みのはいった男へ向きなおる。
「なんですか?」
「いまは人手不足だから、穴埋めのため魔術教官に選ばれたんだろが、あまり調子に乗ったことはするなよ。
若いやつらは効率のいいやり方などといって、万人に通用しない方法で教育をしたがるんだ。ここではそれをするなと言っている。
俺は魔法教育にたずさわって25年のベテランだ。お前たちたは俺のやり方に従ってもらう」
「ああ、なるほど……」
傷のある男は「いいな?」と念押しして、背を向けて歩き出した。
俺の嫌いなタイプの人間だな。
「いやな感じの人ですね」
「えぇ、まぁ……すぐにデカい口叩けないようにしてやりますよ」
驚いた顔で見つめてくるパティオ。
俺はこっそり親指をたてて、薄く微笑んだ。
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