第12話 みょうな違和感
パールトン邸にきて、数日が経過した。
「サラモンド殿、お嬢様はどうですかな。これからうまくやっていけそうですかな?」
「レティスお嬢様に関しては、なんの問題もないです、エゴスさん。とてもよく授業を聞いてくれます。居住まいを貸してくださっていることにも、俺は大きな感謝の意を示します」
俺は、ベッドからおりつつ、早朝から俺の起床を
全力待機していた執事エゴスへ、むきなおる。
「ただ、エゴスさん。ひとつだけ気になることがあるんです」
「おや、それはいったい何ですかな。わたくしめに答えられる事でしたら、お答えしましょう」
「はい、それではレティスお嬢様について、ひとつ……いや、ふたつ。レティスお嬢様は、レトレシア魔術大学に通っているんですか?」
「お嬢様は……えぇ、お嬢様はレトレシアの学生です。ですが、ここ1年ほどは休学されています」
思ったとおり。
どうりで魔術の基礎知識をもっているわけだ。
「なぜ、レティスお嬢様は休学されてるんですか」
「……魔術が嫌いなわけではないと思います。ただ、お嬢様には偉大すぎる母がいます。
お嬢様は優秀な才能をおもちですが、それでもまだ11歳の子どもです。過度な期待をいっしんに受けた結果、お嬢様は学校にいくのをやめてしまいました」
エゴスを目元をふせ、「痛ましいことです」と、声を震わせて言った。
魔法学校に行けなかった身からすれば、レトレシア魔術大学へ行くこは、大変な魅力におもえる。
お嬢様の人間的成長、魔術的勉学のためにも、やはり学校にいくべきだと思う。
俺もなにか力になれればいいが。
「それと、エゴスさん、もうひとつ」
「む、何でしょうか?」
「お嬢様はやはり11歳で間違いは無さそうですが、やや幼過ぎるように思えるのですが……」
「っ、それは、そうですな。お嬢様は真心こめて、大切に育ててきましたから」
エゴスは一瞬ビクッとしたようだったが、すぐに笑顔を取りつくろうと、そう言った。
しかし、やや遅れてエゴスはこっそりと手招きをし、耳元に口をちかづけてきた。
「わたくしめの口から、直接は言えませぬが、お嬢様はプラクティカ奥様の『優しさ』を受けていらっしゃいます。幼く感じるは気のせいではないかと」
エゴスはそれだけ言って、一礼すると、部屋を出ていってしまった。
大魔術師プラクティカ・パールトンがさずけた、娘への優しさ……いったい何だと言うのだろうか。
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