第7話 行ってきます
「なるほど、まだ契約書の記入も行っていないのに、さっそくお嬢様に魔術の手ほどきをしてくれる、と」
「ええ。魔術っていっても、とりあえずポーション薬学の入門知識から、入ろうと思いまして。本人の興味あることから入った方が、学問は身につきやすいので」
食堂で紅茶をいれていたエゴスに、砂糖壺を渡しながら俺は買い出し許可をもとめた。
「意欲的で結構です。ですが、メイドをひとり付けさせてもらいます。サラモンド殿を信頼しないわけではありません。この街の市場には不慣れでしょうからね」
「お気遣い、ありがとうございます。それでは、すこしの間、レティスお嬢様を、任せていただきますね」
⌛︎⌛︎⌛︎
魔法王国ローレシア。
大陸でもっとも繁栄したゲオニエス帝国と比べれば、街の街頭はすくないし、建物の高さも低いように思えるが、それでもこの都市もまけてはいない。
はじめて国外に来た感慨深さがおくれてやってくる。
ああ、本当に俺はゲオニエスを出てきてしまったのか……。
物心ついたときから、ずっと暮らしてきた魔法省とのわかれは望まざる形になったが、渡り船の速攻を考えれば、これは運命だったのかもしれないな。
「なにを、ほうけた顔してるんですか、この鬼畜変態悪漢。あなたには、お嬢様をお守りする役目があるんです、ぼうっとしてないで、シャキッとしてください」
「今朝のことは本当に悪いと思っています。だから、そのひどすぎるあだ名……やめてほしいです」
黒髪黒瞳のメイドは口をへの字に曲げて、チラッと視線をうごかし、前方をスキップして進むレティスを意識すると、大きくため息をついた。
「わかりました、ですが、許したわけじゃないです、サラモンド先生」
「あ、本当にたすかります」
ぺこりと頭をさげる。
「ポーション作りをするのでしたね。私も魔法魔術の心得がたしょうはあります。フラスコは
メイドに道を案内され、おおよその目的地を把握する。
「ありがとうございます、えっと、名前は……」
「アヤノです。ただのアヤノ、とお呼びください、サラモンド先生」
黒髪メイドーーアヤノはペコリと綺麗な、お辞儀をしてくれた。
「サリィ! はら、みてー、これががらす屋さんね!」
「おお、なかなかに立派な加工場ですね」
熱気あふれる火事場と併設されたがらす屋へ。
ウキウキした様子のレティスに先導され、俺たちはポーション作りに必要な材料のうち、試験容器類から買いこんで行くことにした。
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