第27話 反抗期

「チキンカレー食べに行こう、ここで育ったニワトリさんの美味しいカレー。」

 と正司に言われて、3人でカレーを食べに行った。

 屠殺予定が書かれたカレンダーがかかっていて、ちょっぴり切なくなった。

 ありがたく、美味しく頂きました。

「俺はさ、また鯉ン所に戻るけどさ、ゆっくりしてってよ。農業高校だから見るものはそんなに無いけどさ、クラス対抗で作った案山子とか、ふれあい動物園のヤギと兎が可愛いから。本当は、うずらの雛が、めっちゃ可愛いんだけど、一般公開しないからなあ。可愛いんだけどなー。」

 正司が残念そうに言う。そりゃあ、あんな小さな卵から孵った雛なんて、可愛いだろうなあ。

「でも、ヤギも兎もかわいいから。大人しいヤギだけ出してあるからさ。中には凶暴なのもいて、後ろ向くと何故か尻に突っかかって来るヤギがいてさー、可愛いのにふれあいに出せないんだよね。目がクリっとしていて、まつ毛長くて可愛いのに。」

 固まる俺。こんな所で、そのワードが出てくるとは。2人の顔が見れない。

「おやあ ? お二人さん、何か進展ありました ? 」

 正司がワクワクした感じで聞いてくる。俺はちょっと待て、ちゃんと話すから。という合図のつもりで右手のひらで待ったをかけるが、すぐには言葉が出てこない。

「うん。今付き合ってる。」

 間髪入れずに日色実が答える。

「日色実ちゃん ! やったじゃん ! 」

 正司、日色実と2人でガッツポーズ。

「大志、奥手だもんな。良く見つけてくれたよ。」

「うん。大志くん真面目だもんね。」

「そうそう。大人しくて真面目だけど、変わり者だよな。変な事を知ってたり。」

「うん。イメージは『おばあちゃんの知恵袋』だよね。」

 2人でどんどん話していく。俺は参加出来ずに口をパクパクさせていた。まるで酸欠の金魚だ。

「待て、正司に奥手言われるとは思わなかった。だって、お前彼女いないじゃんか。いたこともないし。」

やっとの事で反論してみる。

「そういうことじゃないんだよな〜。」

 正司は、例のタオルで汗を拭きながら、

「ま、おじゃま虫はまた仕事にもどるので、お二人で楽しんでくださいな。」

 と、サッサと席を立って行ってしまった。

「それに俺、日色実が思っているほど真面目じゃないと思うよ。」

 日色実にも反論してみると、

「正司君とヤンチャしてたから ? でもほとんどが小学生の頃だよね ? 」

「いや、中学もそんな真面目じゃ無かったし…」

「大志くんのお母さんに教えてもらったけど、中学1年の夏に家族で夕ご飯食べていた時に突然、『俺、反抗期抜けたから。』宣言したって聞いたよ ? 」

 え ? 全然覚えてないけど。それ俺 ?

「真面目で大人しいはずの息子が、小3からやけに育てにくい、呼び出しもあるような子に変わって、どうしたんだろうと思っていたけど、反抗期だったの ? ってびっくりしたって言ってたよ。でも、育てにくいけど、反抗された覚えがないから、しばらくは本当の反抗期があるかもって、ワクワクしていたらしいけど。」

 ワクワク…ですか ?

 親って普通に1人の人間だよな。って思って、人間としては対等だとか思った時期かもしれないが…ワクワクですか ?

 親を越えられる気がしない。

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