第26話 10月1日東農祭
出来るだけ状態の良い鯉が欲しいからと土曜日に集まることになっていた。
「8時ぐらいに来ないと、たぶん駐車するとこ無いから。」
と正司に言われ、俺と日色実は細萱さん家の車に乗せてもらって8時には校庭の臨時駐車場に着いていた。
ナオちゃん家はお父さんも一緒に家族3人で来ると言っていたので、とりあえずは正門を目指す。
もうすでに青空市場と加工品販売目的のご婦人達で列が出来ていた。
「私、お野菜買いたいわ。」
と、細萱娘さんが言い始め、
「そうですよね。先にそっちに行かないと無くなっちゃいそうですよね。」
「鯉すくい何時にします ? 」
「10時半くらいにしましょ。」
ということで、ナオちゃん家族が列に並んだのを見て、おれが伝令に走る。
買いたいもの買って、10時半に鯉すくい。細萱さんはそのまま自宅の池へ。ナオちゃん家族はあとは自由に。俺と日色実も皆とは別行動する事になった。
「電話をくれたら迎えに来るわよ。」
と娘さんに言われたが、そこは辞退して、バスも電車もあるので大丈夫。好き勝手に遊びます。と伝えた。
9時に正門が開くと、どこぞのテーマパークのように群れが走り出す。
青空市場に着いてすぐ、俺は気がついたら押しのけられて群れの外側に出ていた。しばらく待っていると日色実がじゃがいもとリンゴの袋を持って、細萱親子はじゃがいもとピーマンとその他もろもろ持って出てきた。戦闘民族じゃないのは俺だけのようだ。
そのあと、花と加工品を買いに行った。
日色実が買ったじゃがいもとリンゴと鉢植えの花を俺が持ち、俺が買った烏骨鶏の卵とジャムを日色実が持った。
「1度、車に載せに行きましょう。後で家に送っておくわね。」
との言葉に甘えて、せっせと荷物を車に運んだ。
さて、残るは鯉だ。
校舎の昇降口脇の日陰で
1回500円 ! 鯉すくい !!
を行なっていた。
ナオちゃん家族はもう来ていて、鯉を吟味している。
「お。来たな。」
正司が顔を上げて俺たちを見た。
「1回500円です。」
といいながら、ポイを渡してくるので、お金を渡してコンテナの中を覗く。
皆で真剣に自分の鯉をどれにしようかと悩む。
「決めた ! 」
と日色実が言い、やる気を見せて結構器用に粘っていたが、1匹だけがターゲットだとやはり難しく、破れてしまったポイと交換に鯉を選んですくってもらう。
ミニボウルの中の鯉を細萱娘さんと日色実で携帯で撮影し、細萱さんが持ってきた果実酒用の瓶に移す。中の水は池の水が半分、のこりはコンテナの中の水を足させてもらっていた。
次にナオちゃん、ナオちゃん母、細萱娘さん。
俺は、頭の上が日の丸みたいな鯉を発見して、それに決めた。
正司は金の鯉。『シャチホコ』と命名していた。同じく撮影。
細萱さんはあと4匹をポイすくい無しで瓶に入れてもらっていた。
合計10匹。
最後に瓶の口元ギリギリまで水を足してもらって蓋をして、中の鯉が揺れないようにした後、細萱さん親子はあっという間に帰って行った。
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