第23話 日色実
「今日は本当にびっくりだよ。でも嬉しい。とーっても。」
満足気にヒロミが言う。
「招き猫に似ているって言われた時も嬉しかった。あの子可愛いよね。」
うん。だからヒロミもかわ…。言えねえ。
「前、大志くんのお母さんに、『ねこパスタ』の猫は、この子のことですか ? って、お店で聞いた事があったんだけど、半分だけ正解って言われた。」
そうなんだよ。もともと『喫茶まねきねこ』とかにする予定だったみたい、あの招き猫がお気に入りすぎて。でも看板発注する前に、たまたまテレビで見たパスタを食べる猫が衝撃的すぎて頭から離れなくなり、今の『ねこパスタ』になったらしい。
「ちょっと変わった名前だと思ってた。かわいいけど。」
「ヒロミだって、漢字が変わってるよね。」
かわいいけど…って、言えねえ。
「ああ、
あの、赤いプチプチの実か。南天背負ってる地蔵なんて最強だな。そこに招き猫様プラスされたとあっちゃ、もう、言うこと無しだな。
日色実は、誰も取りゃしないって。と、突っ込みたくなる程ガッチリ抱え込んでいた本をもう一度開いてなでながら、
「私、触るの好きだから、今度大志くんも触らせてね ? 」
などと、ごく当たり前の事のように言うもんだから
「え ? どこを ? 」
と、脊髄反射で返してしまった。
それに対して日色実は笑顔で、
「まつ毛触りたい。」
と言い放ち、
「じゃあ、今日は帰るね。」
固まる俺をそのままに、手をヒラヒラさせて部屋から出ていった。
どういうこと ? まつ毛触りたいって、普通 ? なんでまつ毛 ?
俺だったら、手を握らせてとか、ほっぺ触らせてとか。
まつ毛 ? ? ?
どんな感じで触らせればいいの ?
脳内のどの引き出しにしまい込めばいいのか分からず、むき出しのままの
「まつ毛触りたい。」
の言葉に一晩中囁かれた。
たまらずに、次の日に日色実に聞くと、
「触りたいって思ってるのは本当だけど、私もまだ恥ずかしいからもう少し先かなあ。」
と言われたので、とりあえずは落ち着く事が出来た。
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