第17話 ででさがし
ヒロミから招集がかかった。 ナオちゃんから連絡がきたそうだ。文化祭から1週間がたっていた。
いつものように俺ん家で話し合いを始める。
ナオちゃんのお母さんが、○○デパートの水槽にででを入れたのは嘘だと認めたそうだ。
じゃあ、どうしたのかというと、お隣さんちの池へ、黙って放してきたらしい。
でも。
「絶対に見に行っては駄目。お隣のおじいさんに怒られるから。」と、キツく止められた。なぜなら。
ナオちゃん達は今の所に引っ越してきて2年程になるそうだが、最初の年の秋にお隣さんが怒鳴りこんできたからだ。
「お宅の親がどう教えたかしらんが、自分の家の落ち葉は、自分で掃け ! ! 」と。
その時ナオちゃんも居たので、かなり怖い思いをしたって。
「うっかりしていただけ、最初から怒鳴ることないじゃない。」
って、お母さん泣いていたそうだ。だからナオちゃん、1人じゃ行けないから、一緒に見に行ってくれないかなあ。って言ってるらしいが、さてどうしたものか。
「それにしても、なんで嫌な人の所へわざわざ行って金魚逃がすかなあ。」
という俺のつぶやきに、
「私も不思議に思って、お母さんもう嘘ついてないよね ? って聞いちゃった。」
でもナオちゃんの答えは、今度は嘘ついていないと思う、お隣さんは一人暮らしだから出かけた隙に入れてきたと思う。だった。
逃がすのは確かに簡単そうだが、取り返すとなると、ううむ。
そもそも、金魚を取り返せたとしても飼えるのか ? 嫌だから逃がしたんじゃないのか ? 黙って逃がすのはダメだけどさ。
「とりあえず、1つずつ解決していこう。まず、ででが本当に池にいるのか確認、次に母親を説得かな ? 」
俺の言葉に、
「いい考えがある ! 俺んとこの『東農祭』! 金魚すくいならぬ、鯉すくいするんだよ。もちろん水槽でも飼えるけど、やっぱ池で飼いたいなーって思ってたのさ。ダメもとでお願いしにいかねえ ? 」
「…成程、口実にはいいかもな。でもとりあえずはナオちゃんが飼いたがっている1匹だけとか、池そのものの見学とかかな。」
俺達の話し合いを、ヒロミはニコニコしながら聞いている。この顔がこの前みたいに土偶になったら、俺たちは間違った方向へ向かっているんだな。
「じゃ、俺達が鯉すくいの話をしている間に、ヒロミとナオちゃんは池を見学させてもらう。日程調整はヒロミにお願いします。」
9月の今頃は、昔は運動会が盛んに行われていたが、熱中症対策として、数年前から小学校の運動会は5月に行われているので、ナオちゃんも都合のつく来週日曜日に決行することになった。
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