第13話 マトリョーシカ
「大志くん、これなんだけどね。」
ヒロミがブルーのエコバッグに入った何かをそのまま渡してくる。
「今日バザーで買ったんだけど、可愛かったから…もちろん未使用だし、状態もよかったから。」
何だろうと袋から出してみるとマトリョーシカのぬいぐるみだった。
「すごい、良いの買えたじゃん。まだ残ってたってことは値段設定高めだったとか ? 」
「ううん。役員のエリカに頼んでコソッと取っておいてもらったんだ。もちろん、設定金額通りに払ってきたよ。」
ニコニコと笑うヒロミに、良かったねー、いい物買えて…と返そうとしたら、
「違うよ。プレゼントだよ。誕生日プレゼント。喜んでもらえて良かったー。」
「え ? え ? 何で ? 」
今日は9月3日。俺の誕生日は2月22日なんです…けど… ?
頭にハテナマークが出まくりで固まっていると、
「4月に学校始まった時はもう誕生日すぎちゃっていたでしょ? タイミングなくてずいぶん遅くなっちゃったけど、もらって ? バッグごと大丈夫だから。」
普通に考えれば俺の誕生日は来年2月なのだからその時に用意すればいいものを、もう過ぎたって解釈するのか。…面白い。
とりあえず、ありがたーく頂戴し、家のぬいぐるみコレクションに加えることにした。
ヒロミの誕生日は今度、彼女と仲良しの女子にそれとなく聞いてみるか。
家に帰ってマトリョーシカを袋からだして、ダニよけスプレーと静電気防止スプレーをかけようとして気づいたが、これ、ファスナーがある。
開いてみると中から外側と同じ色形の中型ぬいぐるみが出てきた。
これも、ファスナーがついてる。期待して次のを取り出してみると形こそマトリョーシカっぽかったが、黄色一色の、ぽふぽふしたポーチだった。なんだか一気に手抜きをされた感じで笑えて仕方ない。ひとしきり笑った後で、丁寧に処理して袋にもどして本棚の上に飾っておいた。
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