第12話 でで金

(お母さんに会って、ナオちゃん借りちゃった。)


(ジュース飲みながらお話聞いてる。)


(って金魚のことだった。)


 などとポツリポツリと連絡がはいるのを確認しつつ、俺と正司は食べて飲んで文化祭を楽しんでいた。

 1時間ほどたった頃ヒロミから、ナオちゃんがお母さんと帰ったと連絡あり、俺達と合流することになった。

「じゃあ、お昼にしよう。食堂でうどん食べよう。」

 と、正司が提案してくる。

 俺はもうお腹減っていなかったがヒロミはすいているはずなので、食堂で落ち合うことにした。

 2人は冷うどんをすすり、俺はかき氷を食べる。

 ヒロミの話をまとめると、こうだ。

 ナオちゃんが小学校に上がる前から飼っていた縁日の金魚が大きくなり過ぎたので『家じゃ飼いきれない』と思ったお母さんが、○○デパートのロビーにある水槽に、金魚を入れて来てしまったそうだ。

「どう思う ? 」

 と、ヒロミ。

「え ?勝手 に入れられるもんなの ? 入っているの確認したの ? 」

 と、俺たち。

「それが、電車に乗って行く距離でしょう ? ナオちゃん1人だといろいろ難しくてまだ行ってないんだって。でも、行けた時に水槽に丸く穴を開けて、取ってこようとしたんだって。映画なんかで出てくるガラス切り、あのイメージで。」

「彫刻刀で ?!」

 ビックリした。

 鉄でガラスは切れないだろう。っていうか、そもそも水のない所に穴開けられたとしても、大惨事間違いない。

 ガラスは固いが、脆い。水圧でいっきに…。

 小学生ってそんなに馬鹿だったっけ ? 俺がいうのもなんだけど。

「そもそもね、そこにがいるかわからないと思う。だって、あそこの水槽、熱帯魚が入っているんだよ ? 」

 俺達は顔を見合わせた。

「どうもね、ナオちゃんにお母さんが嘘をついていると思う。家で飼いたくないって思ったのはホント、でも違う所に逃がしちゃったんじゃないかな ? 」

に流しちゃったとかな。」

 ため息混じりに正司が言う。

 やさしいな正司。俺は下水にって言いそうだったよ。どちらにしろ、子供にうそをつく大人は俺は嫌いだ。

「だからまずはね、ナオちゃんにもう一度お母さんに頼んでもらう事にしたの。ちょっと強めに『に会いたいからデパートに連れてって。』って。あ、って、ぶでかいからなんだって。」

 ヒロミの携帯番号を教えて、まずは母親がどう出るか確認してから次の手を考えよう、決して先走って変な行動をおこさないようにと言い含めたそうだ。

 そんなこんなで文化祭2か目が終わっての帰り。

 正司は先に帰り、後片付けを終えた俺とヒロミは連れ立って外へ出た。

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