第7話 たい焼き
次のバイトさんが来たので、俺も部屋へ戻った。部屋に入ると、まんまるクジラのぬいぐるみを抱え込んで本を読んでいるヒロミが居た。好みの本に出会えたのか、少し頬が紅潮している。
「面白い?」
「面白いよう。お勧めするよ。 次、読んでみる?」
勧めてくるという事は、彼女なりに満足しているということだが、以前勧められて読んだ本は、ふわふわと軽くて、溶けるとベタベタになる綿あめのような本だったので、
「パス、します。」
そう言って俺は俺用の本を鞄から出す。
本好き、ぬいぐるみ好きは2人の共通点だ。ついでにケータイも出してチェックしてみる。
『今からおみやげ持って行く』
の文字が。正司からだ。そしてなんと 3分もしない内に
『俺だよあけてー』
の連絡が。
「正司が来たわ。」
ヒロミに言いおいて、裏口の鍵を開けに行く。
「はいよ、おみやげ。」
正司はニコニコしながらホカホカした紙袋を渡してくる。
ウワーイ。タイヤキだー。
いや別に、好きですよ? 好きですけども。
「夏の真っ盛りじゃねーか。」
ぽつんと言うと、
「分かってねーなー。こたつにミカン、冷房にたい焼きよ。だいじょーぶ、ここのは美味いから。」
部屋にもどって先程ピザ食べたヒロミに
「たい焼きたべる? 」
と聞いてみた。
「食べるっ。 」
やっぱりね。
袋を開けるといくつも入っている。しかも薄い白い紙の袋で個包装。
「たくさんあるね。餡子、チョコ、クリーム……カレー? 」
ローテーブルに並べてみる。
「量多くない? カレー3つもあるよ? 」
「俺も最初カレー? って思ったけど、隣で買ってたおばあちゃんが『ここのたい焼きおいしいのよぅ。一人暮らしだとカレーなんてつくらないけど、これ、夕飯にちょうどいいの。デザートにはアンコのね♡』って買ってたから、俺もつられちゃって。冷めても美味いけど、冷めなくても美味いから、食え、食え。」
口真似しながら勧められて、気になるので俺はカレーを選び、ヒロミは餡子を選んだ。
「いただきまーす。」
頭からまるかじりのヒロミ。一口がでかい。豪快。
俺はシッポから食べる派。うん。うまい。皮がパリもちでいいねー。
「オレ、今日3つ目。」
と、言いながらやはりカレーたい焼きを食べる正司。って。腹からかよ。しかも3つ目って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます