第6話 火災報知器
「あと何入れる?」
「これ入ってるカレーってなかった?」
と、正司が半分に切られたカボチャを取り出し、そのままドボン。
適当にパキパキとカレールーをいれ、
「とけたら味見♡とけなくても味見♡」
「チーズ。チーズ入れてみよう。」
あと何入れよう、これいれよう。
あはは。いひひ。と妙なテンションで、浮かれ騒いでいる時に、正司の母親は帰って来た。
鳴り響く報知器の中を。
それからは消防が出てくる騒ぎとなった。被害としては鍋をひとつ炭化するほど焦がした事と、真っ黒いススで汚れたガスレンジ台。
驚き、怒り、安堵、悲しみもろもろと、感情が激しく行き来した正司の母親が最後に能面のようになったのが、とてつもなく恐ろしかった。
親父に言わせると、俺達2人はアクセルだけしかない車のようなもので、ブレーキか、ハンドル操作をしてくれる人物がもう1人必要だそうだ。
それからは2人っきりで遊ぶ事は禁止された。
正司の家も出禁になった。
だが、やはり2人は仲良しなので、他の友達と数人で遊んだり、俺の家で親の監視付きで遊ぶか、どちらかとなった。
高校生になり、ようやくこの頃2人きりでも何も言われなくなったが、やはり2人っきりは避けてしまうくせが付いていた。
ヒロミは御目付け役としてピッタリだそうで、彼女がいる時は、普通に正司とも会える雰囲気になっているので、ありがたい。
正司にヒロミを紹介した時は、
「うちでバイトしてくれている同級生の、」
とつけたのにも関わらず、2人きりになった時に、
「彼女 ?」
とニタリ。
「いや、いやいやいやー。」
自分でも否定しすぎと思ったが、実際付き合ってる訳でも告白している訳でもないし。
「一緒に帰ったりするだろ ?」「うん。」
学校一緒だからな。
「でも自分の部屋に入れるだろ ?」「うん。」
親のお墨付きだからな。
「じゃ、付き合っちまえ。」
と、かるーく突っ込まれるが、友達と彼女の違いってなんだ ? 今のままでいいだろ ? と思う。
考え込んだ俺に向かってニタニタすんのやめろー !
と思いつつ、それ以上会話は続かなかったので、いいです、友達のままで。あるいはバイト仲間で。と自分を落ち着かせて終了する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます