第5話 酒盛り?

 俺自身、やんちゃすぎるわけでもなかったはずだし、どちらかというと大人しい方の部類に入ると本人も思っていたし、親も担任の先生も、きっと思っていたと思う。

 しかし、3年の時のクラス替えで、ひょうきん者だが先生の手を焼かせる訳ではなく、やはり普通の子と認識されていた横山正司とクラスが一緒になると、様子がかわってしまった。普通の子プラス普通の子は、普通を越えるらしい。

 2人は馬があった。いや、片方は鹿だったのかもしれないが。

 ・虫眼鏡で壁紙を少しこがした。

 ・跳び箱の中に隠れて先生を驚かせた。

 ・ミズカマキリに夢中になって、プール参観の時の整列をみだしまくった。

 等と細かい事はキリがない。

 が、4年生のときに家庭でちょっとやらかしちまった。

 クラスの女子とグルメな論争が起き、売り言葉に買い言葉、俺達2人は彼女達が

「美味しい!」

 と声をあげる程の料理を作るはめになった。

 大体、男の子なんていうのは、いつだって見栄っ張りでええカッコしいなのだから、そういう所を察して、少しでいいから譲ってほしいものだ。

 まあ、とにかくなにか作らなくてはならなくなった俺たち2人は取りあえず休日に正司の家へ。

 最初は話し合いという形で始まった美味しいもの会議。だが、普段料理の手伝いをしない為、どうも話が先へ進まない。じゃあ、ということで台所へ移動して、鍋がある、ジャガイモがある、玉ねぎがある、と探索していると、

「カレーでいいんじゃね ?」

「そうだよね、食べたことない物は作れないよね。」

 という話におちついた。ここまでは良かったのだ。

 少し前に正司のお母さんは買い物にでかけていった。邪魔が入らないとばかりに鍋に水を入れ、火にかけ、取り敢えずジャガイモ、玉ねぎ1こずつ適当に切って、人参は正司が嫌いだから入れず。

「何か特別な物で味付けしなければ、普通のカレーになってしまう。なにがいいだろう。」

 と、2人で思案し、果物や調味料でひとつひとつ候補をあげていった。

「酒は ?」

 日本酒を取り出す正司。

「どっちかっていうと洋酒じゃないの ? 他になにかないの ?」

 赤ワインとブランデーがあった。ビールはさすがに入れようとは思わないし。

「もし、入れるとしたらどれがいいんだろう。」

「じゃあ、なめてみよう。」

 コップに少しずつ3種類入れ、2人でストローで1口ずつ味見。

「あんま、おいしくないね。」

「結構ぽっぽするね。」

「リキュールってのもあった。これもお酒?」

 と、さらに味見。

 2人共飲んでいるという意識はまるでなかった。でも、子供だからか、ストローを使った所為か……

 酔っ払ってた。






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