第三話 天才

教師の暴走を止めることへのお願いをされたのだが、なぜ、そのような依頼が自分に回ってきたのか、その理由の元凶である彼女について、そろそろ話さないといけないと思う。


その人物の名は笹橋胡春ささはしこはる

彼女は、僕のクラスの学級委員であり、それはまさに自由奔放、才色兼備、頭脳明晰、運動神経抜群と、いった彼女といえばこれくらいの四字熟語と六字熟語が似合うまさに現世に現れた神のような女子生徒だ。まとめ役である級長であり、誰にでも優しい。また、この為縛なしばの自治体の会長の娘であり財力もそれなりにある。そして、かわいい。うん。まさしく神である。


しかし、学級委員と言ったら黒縁丸眼鏡にみつあみを施した女子がテンプレートみたいに思いつくのだが彼女はむしろ黒ギャル白ギャルとはいかないがギャル寄りの女子生徒である。髪の毛は赤のかかった茶髪でそれを後ろでポニーテールに結んでいて、制服は違和感のないくらいに着崩している。


まさに、カリスマギャルと呼ばれるような人物である。


しかし、先程も述べた通り、彼女は自由奔放である。自由奔放すぎるのである。うっかり、というより自由奔放のほうが似合う。

自分の好奇心というか欲に忠実なのである。それも、君本当に十五歳か、と疑うぐらいに。まさに、頭脳は大人以上、体は高校生、しかし行動が小学校初等部と例えられる存在である。どんな奴だよ。


なぜ、お願いが彼女の話に関係するのかというと僕が彼女に振り回されているから、という答えが一番的確だろう。彼女はなにを思ったのか、いきなり目の前に現れ、かまってくる。そしてそのたびに学級委員としての仕事を押し付けてくるのだ。


だから。なぜ、構ってくるのか一度、聞いてみたことがあったのだが。

「面白そうだから」

と彼女は答えてどこかへ行ってしまった。

その時はまだ悪戯も些細なもので『やっべ、これ惚れられているんじゃね』とか思っていたりもしたが生憎とその感情はすぐさま怒りに変わることになった。あの時は不覚にもドキッと心に来てしまった。


まあ、そんな感じでなにかと彼女の暴走に巻き込まれたり、仕事をこなしたりしているからなのか。『コイツ、この人をなんとかできんじゃね』というような印象を持たれ、僕は笹橋胡春に関しての相談を受けるようになった。悲しい限りである。



そこまでは良かったのだ。だが、そんな僕になにを思ったのかこのことを利用して、彼女はちょっかいをかけたり、さまざまな罠を仕掛けるのだ。そして、その手伝いに加わるクラスメイトたち。

そして、それに見事引っかかる僕である。一人では多数に太刀打ちできなかったか。すごく悔しい。



僕が馬鹿だからひっかかった、のではなく彼女のトラップは二重、三重にされており、一つ目はたまに避けることができる。もう一度、言っておく、たまにだ。


そして、一つ目を回避した後に優越感に浸っていると第二の仕掛けが発動。

そして、かかってしまう。

ひどいヤツだ。そこらにいる不良よりもたちが悪い。


そんな彼女でもなかなか、面倒見が良いことから後輩からの評価は良く、また日が経つにつれて脅威度が増してくる罠に僕の好感度は右肩下がりである。


この前は、僕の家のパソコンをハッキングして検索履歴を見られ、はたまた、ハッキングが荒かったのかパソコンが再起不能と陥った。

もちろん、何十万と払って買い直したが、自腹で。


そんなに金銭的にも身体的にも、精神的にも、もう一度言う、金銭的にも全体的にやられっぱなしなしの女尊男卑の世界でもないのに毎回彼女に負けている僕なのだがそれでも彼女のことは尊敬はしている。


だけど、信用と信頼はしていない。毎回、弄ってくるから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る