新第15話 炎上国 ミネルバ

──シュン!



「着いた?」


「……そのはずだけど……これは……」


ネプチューンを後にした私とモグは、ネプチューンに来た際にも使った移動スキルで赤竜族の国──《ミネルバ》に来たのだが、着いた早々、目の前に広がるその国の景色は燃え上がり、まるで革命か何かが起こった様な有り様だった。


「一体何が……!?」


「……やはり、


「それってつまり──」


「ああ、シーちゃん。恐らくこの国は既に占拠されている」


「そんな……」


ネプチューンでモグが言っていた予感はこれのことだった。マロー王は私達がここへ来ることを予知し、先にミネルバに訪れた。そして私達が来るのを待っていた。ということは──



ザザッ!



「ッ!誰!?」

「出てこい!」

「やだなぁ~。一度お目にかかったはずなんだけど──」

突如、後ろに現れたのはパーティーでミーヤちゃんをさらった黒いフードを被った少女だった。

「あなたは!!」

「そう……女の子の居場所を私は知っている」

「ミーヤちゃんはどこ!」

「おっと! 簡単には教えられないなぁ~。私も先輩に用があってここへ来たんだ」

先輩という言葉にモグが反応する。ヴィアがなりすましていたことに気づかれ──

「そこの蜘蛛!」

「ッ!? ……何だ?」

「私の……私の先輩の居場所を教えろー!!」

「嫌だと言ったら?」

モグが揺さぶりを掛ける。その返答に少女が身に付けていたフードを取り、「ふ~ん……」と少し顔を上げた。そしてサッと右腕を伸ばす。

その袖の隙間から鈍く光るナイフが二人を緊張させる。

「……モグ、ヴィアがなりすましていた男は今どこにいるの?」

私が小声でモグに聞く。モグも同じ様に返す。

「……ここにはいない。ヴィアがそう言ってた。けど──」

「けど?」

「……確認をとっていない。あと、なりすましていた男の意識が戻って、ここへ来ている可能性は高い」

「つまり、わからないのね?」

「うん。でも──シーちゃん!?」

私が少し前に出ると、真剣な表情で少女に言った。

「……その先輩という人はここにはいない!」

「本当か……?」

「……ええ」

「いいだろう。君を信じてみよう。けど、ここへ先輩が来ていたら、私は真っ先に君と君が守ろうとしているあの娘を斬るから」

そう言うと、少女は再びフードを被り、火が移っていない暗い森へ去っていった。彼女が見えなくなった途端、地面に両手をついて、息を切らした。

「はぁ……はぁ……何とか、行ってくれた……」

「大丈夫か、シーちゃん」

「うん。ありがとう、モグ。ここで戦ったらマロー王に気づかれる。それだけは回避したかったから……」

「もう……無理しない! 君を失うわけにはいかないんだから!」

「それは言い過ぎかな?」

「そんなことは……と、とにかく、ミネルバの元へ行ってみよう。まだ彼女がこの火災の犯人と断定するには早いからね」

「そうね」

さっきの様に新たな敵が現れる可能性を考え、辺りを警戒しながらモグの後に着いていった。



         ◇



「ミネ! いるかい?」

モグがその場所に着いた途端、上に向かって声を上げた。……しかし、何も反応がない。

「いない……?」

「おかしい。ここにいないなら、状況はますます悪い。恐らくミネは城にいる」

「城って……そんな……まさか……」

「……ああ。そしてこの火災の原因は──ミネルバだ」

振り返ったモグの表情から私が感じたのは、焦りと絶望だった。

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