新第14話 稽古の時間は飛ばします!?

 「さて、シーちゃんはどこにいるのかな~……あれ? ここにもいないや」

 「おい、マリン。親友はどこに居る? いないではないか」

 「ん~。集合場所に向かっちゃったのかな~。滝の所に向かってみよう」

 「いなかったら私はもう、帰るぞ」

 「わかった、わかった。とにかく、行ってみよう」

 モグとネプは露店に居ると思っていたシエテを見つけるために、少し早いが集合場所に向かうこととなった。そして滝のあった場所へ向かうと、シエテは確かにそこに居た。

 「あ! いたいた! お~い!」

 「ッ! お帰り、モグ~」

 シエテが剣を鞘に納め、二人に駆け寄る。そしてモグから隣に腕を組んで立っている知り合いを紹介される。

 「シーちゃん、この子が話していた人物。そしてこの国の神様『ネプチューン』さ」

 「あ、どうも。初めまして。シエテ・ペンドラゴンです。モグがいつもお世話になっています」

 「……それで? この娘に剣の作法を教えると?」

 ネプがモグに聞く。その問いにモグが答えた。

 「そうそう。この娘にあの滝を割るコツとかを押してあげて欲しいんだ」

 「ふむ。ではまず、現状を見たいのだが──」

 「あ、あの~」

 何故か言葉を遮り、私が手を上げる。と言うのも、

 「ん? どうかしたの、シーちゃん」

 「それがね。あの滝…………割れちゃった」

 「「え?」」

 二人が今一度、滝を確認する。──しかし、滝はちゃんと存在している。

 「な、何を言い出すかと思えば、バカな事を──」

 「あらら~……」

 「ま、マリン!?」

 モグは気付いた。確かに滝はあるが、数時間前に見た滝ではないことに……。

 「……ま、まさか……?」

 「スキルで何か強くなったから試しにスッて斬ってみたら……斬れちゃった!」

 「ではあの滝は……」

 「上に登って奥にあった川をこっちまで伸ばして来た」

 「な、なにいいいいいい……ッ!?」

 

 

         ◇

 

 

 少し前、私が露店に飽いて集合場所に戻ると、試しにスキルで剣に何かしらの力を付与させて元の滝を斬れないかとテキトーにやっていると、27回目で青い輝きが剣に付与され、滝に向かって「えい!」と軽く振ってみた途端、見事に滝が割れ、元滝があった場所は崖になってしまったのです。流石にヤバいと感じ、えっちらおっちら岩を登り、上に元々あった川とこの場所を継続付与されていた剣で崖と繋ぎ合わせ、今の形となったのでした。

 どこからか出した紙芝居で私は唖然とする二人に説明。どうやら事の顛末は伝わった様で何よりである。

 「ははは……さ、流石シーちゃん」

 「……こんなことがありえるとは……」

 口を開けた二人に私が頭をポリポリと掻き、少しモジモジしながら言う。

 「あ、あのね。滝は確かに斬れたんだけど、剣術は皆無だから……その……ネプチューンさんに教えてもらいたいな~……なんちゃって!」

 「ふん。全く。君はとんでもない人を呼んできたものだ」

 ネプチューンは組んでいた腕を腰に当て、少しニヤケながら言った。そして、その場で元の姿に変化すると、胸から鱗を一枚取り、シエテに手渡す。

 「滝を斬れたのなら、その修行はいらない。自分が守りたい者のために剣を振れ。これはお守りだ。『水を斬るスキルの確率を上げる』。その剣と融合させればいい」

 「融合? 私、出来ないよ?」

 「私が後でやるよ。あ! そうだ、鱗、鱗……」

 モグが思い出したように懐から緑色に輝く鱗を私に渡す。

 「これって──」

 「そう。ネプチューンと同じ鱗さ。これには『風を斬れる力を引き出せる』……らしい」

 「らしい?」

 「アーサから貰ったの。いつか使うかもって。こういうことになるとは思わなかったけど」 

 「そういうことなら、貰っておく」

 私が二つの鱗を眺めていると、ネプチューンが人の姿に変化し、モグに「このあと、どうするんだ?」と、聞いてくる。

 「それなんだが、この様子だと鱗を先に集める方が良さそうかなと」

 「他にもあるの?」

 私が聞くと、モグが手を出し、指を折りながら答えた。

 「二つは今ここにあるネプの鱗と緑竜族の神『アルテミス』の鱗。そしてこれから目指す赤竜族の神『ミネルバ』、白竜族の神『アポロン』。この二つがロマー王を討つために必要になると、私は思う」

 「ミネルバとアポロン……」

 「なら私は共に戦ってくれる仲間を探しておこう。最終決戦の時にでも呼んでくれ」

 「そうさせてもらおう。では、また後で。ネプ」

 「ああ。君も気負付けなよ。ミネルバの事だ、あっちと既に手を組んでいる可能性は高い。早めに向かうことをオススメする」

 「……わかった」

 「あっちって?」

 私がモグに誰の事かを尋ねると、苦い顔をしながらモグは答えた。

 

 「──……黒龍族の王にして最大の敵、

 

 もはや、一刻の猶予もないことを私は初めて知ったのであった。

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