新第8話 再会

「──……うう。……?」


 真っ暗で何も見えず、何も聞こえない。手や足の感覚も無く、頭だけが宙に浮いている様な感覚……。すると、


 「んッ! 何? 眩しい……」


 突然、強烈な光が私を照らすと、先ほどまで見えなかったこの空間が露となる。


 「──この場所……前にも……あっ!」


 腕はないが何となくポンッと手を叩く感じで、記憶に新しいこの光景を思い出した。


 「……ここ、神様の!」


 「元気そうでなによりじゃな」


 「うわっ! 本物!」


 私の言葉に反応して後ろからあの時聞いた神様の声が聞こえてきた。


 「そこにいるんですか!?」


 「居るとも言えるし、居ないとも言える」


 「……何ですか、それ?」


 「シエテよ」


 「は、はい! 何でしょう?」


 「お主を助けるのはこれが最後じゃ。次はないと思え」


 「助ける?」


 「お主は銃弾でこの世界でも死んでしまった」


 「……そ、そうですね。あはは……」


 「だからこれが『最後』じゃ。お主の願いを叶えるまでは」


 「私の……願い?」


 「うむ。お主は忘れてしまった。心の底では覚えておるが、思い出せていないのじゃ」


 「願い…………」


 「良いか? 必ずその忘れてしまった願い事を叶えてこい。それが叶うまではここに来るな。お主が来るにはまだまだ早い」


 「神様! 私のその願いは一体……?」


 「きっと思い出せる。お主の物語はまだ始まったばかりじゃからな。……さて、元に戻すぞ」


 「あー! まって! ヒントとかでも!」


 「くどい。願いは自分で叶えてこそ願いじゃ。他人に任せきる願いは願いではない」


 「……わかりました。必ず、叶えて見せます。私の……私の大切なその願い……ッ!」


 

 ピカー!


 

 再び強い光が私を襲う。そしてあるかわからない眼を瞑った。


 


         ◇



 「──……ッ!」


 「おおッ! 気がついたぞ!」


 「シーちゃん~!」


 「わあっ! モグ! それに皆も! 何があったの?」


 私が眼を開けた途端、モグが抱きついてくる。その後ろではお馴染みの顔が並んでいた。


 「……覚えてないの?」


 「……ん~……あんまり?」


 「正に奇跡と言うやつか……シーちゃんが、ミーヤちゃんを守っていた所までは覚えてる?」


 「え? う、うん……」


 「そのすぐあと、もう一人の男に拳銃で撃たれたんだ。私が何とかスキルで応急措置はしたけど、医者ではないからもう助からないって……本気で思って……うわ~ん!!」


 私の手を両腕でガッシリと握り、ワンワン泣くモグの姿に私はとても嬉しく思った。何故なら──


 「モグ、ありがとね。ここには私の家族は居ないから初めは正直、すごく不安だった。でも、この国でミーヤちゃんやアーサ王、セレンさん、そしてモグと出会えた私は、とっても幸せよ。これからも大切な友達で居てね」


 「……うん。……わかった」


 「……それより、ミーヤちゃんは?」


 「…………」


 皆が苦い顔をする。ここに居ない時点で大方予想はついていたが……。


 「……ミーヤ嬢は人質に捕られた。呪いがなければこんなことには……」


 「そんな! モグのせいなんかじゃない! 私がもっと見ておけばよかったことよ」


 「そうだね。だからこそ、君を待っていたのさ。起きると信じて、ね」


 「どういうこと?」


 ワンワン泣いていたモグが涙を拭い、表情を一変させる。そして、


 「そろそろ出てきたらどうだい。レオナ婦人……いや、ネヴィア!!」


 一番後ろに居たレオナ婦人が突然下を向き、肩を小刻みに揺らす。そしてゆっくりと顔を上げる。──そこには狂気に満ちた彼女がモグを睨んでいた。


 「あーあ。……バレていたのね。蜘蛛女。やっぱりあんたに掛けた呪いは小さかった様ね。もっと強いのを掛けとくべきだったわ」


 「レ……レオナ……!?」


 冗談だろとアーサ王が妻に手を伸ばす。しかし、


 

 ザシュッ!


 

 「……ッ!! ぐああああッ!」


 「ふん! あんたはもう用済みよ。楽しかったわ、あんたとの『夫婦ごっこ』!」


 ナイフで斬られ、激痛が走る右手を抑えるアーサ王。その眼差しは怒りと憎しみが混ざっていた。


 「あはははは! いいわ~! その表情。もっと見せて!」


 「……て」


 「ああ?」


 「やめて!」


 「チッ。あんたもあんたよ。あの剣は私が頂く為にここまで嘘をついてきたのに。急に現れて、スキルを使えるですって? ……は! 笑えない。全く笑えないわ!」


 「ならもういいでしょ。貴女には私たちの前から消えてもらう!」


 「やってみなさい!」


 ネヴィアが襲いかかる。私は手を彼女の前にかざして一言、


 

 「……【パーフェクトスキル】!!」


 

 「あの黄色いや──」



 ドッ!



 ネヴィアが黄色いやつと言ったその瞬間、シエテの左手から物凄い力で『空気』そのものが放たれる。


 


 パリーンッ!


 


 色鮮やかなステンドグラスがネヴィアの体を受け、壮大に割れる。


 「くはぁ……ッ!?」


 私は初めて人に【パーフェクト・スキル】を使うと、その相手に向かって叫んだ。


 


 ────「ミーヤちゃんは私が絶対に助ける。貴女の好きにはさせない……ッ!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る