屋上で出会った君は、学校一の美女(ビッチ)でした。
えぐち
第一章:放課後、君と屋上で
第1話:屋上で、君は。
ハァ……ハァ……ハァ……。
勢いよく教室から飛び出した俺は、階段を駆け上がり逃げるように屋上の重い扉をヤケ糞に開けて、雨で少し黒ずんだコンクリートに倒れこんだ。秋風がひんやりと吹き込み、冷たいコンクリートが熱くなった身体を冷ましてくれる。
あがった息を仰向けになって整え、空を見上げた。
雲は穏やかに流れているが、逆行するように俺の心は心底穏やかではない。荒ぶっていた。
「そこの少年」
誰もいない、立ち入り禁止の屋上で声が聞こえてくる。いまになって考えてみると、なんで屋上の鍵開いているのか疑問に思う。
「しょーねーん」
またもやどこからか声が聞こえてくる。俺は起き上がって、下の階で声がするのかとフェンスへと近づいた。
下を眺めると運動部の熱の入った掛け声や吹奏楽のトランペットの音しか聞こえない。
しかし、そもそもだ。運動部の声は「ファイト~ゼッ! オイッ!」という掛け声であり、「しょーねーんーゼッ! オイ!」ではなかった。そんな掛け声ないだろうと分かっていながらもつい耳を澄まして、掛け声に集中してみる。
「しょーねーん……ゼッ!」
「オイッ!」
いやいや、違うだろ……釣られて掛け声を出してしまった。
「あははっ。後ろの上だよ。少年」
後ろを振り返ると、先ほどヤケ糞になって開けたドアの上には人が三人ほど座れるスペースがあり、そこに一人体操座りをしている女の子がいた。
俺はこの人を知っている。なにせこの高校では有名人だから。良い意味ではなく悪い意味で。
そう、この人は学校一のビッチで有名な
彼女は肩より少し上に伸びた黒髪をくるくると指で弄りながら、クスクスと笑っていた。
「ビッチ……」
つい口走ってしまい、咄嗟に自分の口を手で抑えた。
「君、お姉さんにビッチ呼ばわりは失礼じゃないかな?」
聞こえてた……。
「確かに失礼でした。すいません」
「素直でよろしい」
「というかそうやって言われても仕方ないんじゃないんですか?」
「ほう。それはどう意味かな?」
「だってパンツ丸見えですよ。というか見せてますよね。それ」
彼女は体操座りで脚を閉じずに少し開いているので、太ももの間から薄ピンクのパンツが見えていた。いや、見せていた。
座っていてもスタイルがいいのが分かる。シュッと引き締まった太ももに、紺ソックスでさらにしまって見える脚。しまいにはパンツまで見えている。エロすぎぃ。童貞には刺激が強すぎるよぉ足閉じてぇ。
俺は咄嗟に目を逸らした。
「見せているじゃなくて、君が見ているだけ」
「そんな格好していたら見ちゃうでしょ。男の本能です」
「私は別に見せてるつもりはないよ」
「だったら閉じなさいよ……」
「なぜ私が閉じないといけないの? 君が見なければ良いだけの話だよ」
屁理屈だろ。見上げたらどうしても視界に入るのわかんねえのか。顔よりそっち見るだろ。ありがとうございます。
「はいはい。じゃあ俺は帰ります」
「待って。折角だからお話ししようよ」
彼女はそういうと隣をポンポンと手で叩き、手招きしてきた。
「いや、遠慮しときます。今そんな気分じゃないので」
「ケチだなぁ。まあ良いや」
諦めが早く、鼻歌を歌いだした彼女は何を考えているのか分からなかった。けど、もう関わることなんてないからどうでも良い。今日会ったことは偶然で特に運命を感じるとかはない。
失恋してすぐ他の女と仲良くなって、変に噂された方がめんどくさいし、彼女も可哀想だ。
「それじゃあ」
とドアノブに手にかけ少しドアを開けた時、下から体育教師の野木の声が聞こえてきた。
「
かなりお怒りのご様子だ。
「やべっ!
ドアを閉め、あたふたと隠れれる場所を探す。
「少年! こっち! 早く上がって」
急いでハシゴのある方へと周り、手を差し伸べてくれた彼女の手を借り登った……のは良いのだが勢いよく引っ張られたのでそのまま彼女の上へ覆いかぶさるように倒れてしまった。
ガチャリとドアが開く。不運はまだ続くようだ。
「千草! いるんだろ! 出てこい」
「めっちゃ怒ってるね? 何したの?」
「シッ! 静かにしろ」
「ちょっ……動かないでよ……んっ」
「静かにしろって。変な声出すな」
「だって、その……あっ……股に……すごいぐいぐい……当たってる」
「あ……」
膝があそこに当たっておりスカートも捲れ上がって、少しだけピンクのパンツがご開帳。そして言われてから気付く謎の柔らかさ。
「千草! ……いないのか。というかなんで屋上の鍵開いてるんだ? チッ、職員室に戻って鍵取って来るか」
ガチャンとだが閉まる音がしたのを確認し、やっと解放される。
「エッチ」
「いや、これは不可抗力で……」
「途中わざとやってたでしょ」
「いや違うって! どうにか離そうとしたんですよ!」
「感触堪能してた」
「まあ少しは堪能しましたけども」
「やっぱり」
「でも慣れてるんでしょ? こういうの」
噂通りであれば、彼女がこんな事気に止める筈もないだろう。と勝手に思っていた。
「さあ、どうだろうね」
彼女の表情は曇り、視線を落としそう答えたのだった。
*****
一応、こちらにも宣伝を。
『花宮さんと同棲!(仮)』
というタイトルで今日投稿しました。よければこちらも楽しんで読んでもらえればと。URL貼っておきます。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893257707/episodes/1177354054893257886
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます