懐かしさ
「あれ……ほんとにあいつが女子なのか疑わしくなってきたな……?」
男友達として接しようという俺の思いは、何かこちらから意識するまでもなく有紀の行動によって固まっていくことになった。
◇
「あ、康貴くん。どこ行くのー? 一緒に行くよー」
「いやトイレについて来るな」
「あははー。連れションだ連れション」
「お前は女子トイレだろ!」
「康貴くーん。ねえねえ、愛沙ちゃんおっぱいおっきくなったよね?」
「え……?」
「ずばり、康貴くんから見てどのくらいあると思う? 意外とガードが堅くて触らせてくれないんだよねー、愛沙ちゃん」
「当たり前だろ!」
「で、どうおもう? あ、ちなみに私はDだよ!」
「やめろ!」
◇
「なんだろ……こう……まなみとは違った振り回され方というか……振り回されっぱなしな感じはちょっと、懐かしいかもしれないな。
◆
「急いで康貴くん! めちゃくちゃでかいカブトムシがいたんだ!」
「待ってくれ有紀……追いつけない……」
「仕方ないなぁ。ほら、掴まって」
有紀が手を差し伸べてくれ、当時の背丈ほどの崖のような、今思えばただの段差のようなところを乗り越えていく
「はぁ……」
有紀に追い付くのに必死でどこをどう通ってきたかなんでまるで覚えていない。
「ほら! もうすぐだよ!」
そう言って手を引く有紀。
思い返せばこんなことが何度もあった気がする。
愛沙はもちろん、まなみは引っ込み思案なままだったし今のような運動能力はなかった。
基本的には愛沙とまなみと遊ぶことが多かった俺にとって、有紀は本当に男として遊べる貴重な相手だったんだ。
好きなものも、遊ぶ体力も、遊び方も、何もかもが愛沙ともまなみとも違っていて、有紀と過ごしたのは数ヶ月だったはずが毎日輝いていたように思える。
「こんなことあの二人じゃ無理だし、康貴くんとしかできないからね!」
「そうだな……」
「やっぱ男と遊ぶのも楽しいよね! 康貴くん」
「ああ」
ニッと笑った有紀とハイタッチしたあの日の思い出は、今も鮮明に思い出せるものだった。
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